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仇名の由来
第五章

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「それでだよ」
「伊代の古狸ね」
「それで名将で作戦もよかったから」
「狸ね」
「そうだったしね」
「そんな人の仇名もあるから」
 だからだというのだ。
「阪神はね」
「仇名多いんだ」
「本当にね」
「そう言うんだ」
「ええ、カープも負けていられないわね」
 千佳は今度はきっとした顔で言った。
「いい選手一杯いるしね」
「いい仇名つけていくんだ」
「そうするわ、歴史の長さは十四年負けてるけれど」
 阪神の創設は昭和十一年であるのに対してカープは昭和二十五年である、二リーグ制になってえからカープは誕生したのだ。
「その歴史ではね」
「負けてないんだ」
「十四年の差なんて」
 千佳は自分の兄に腕を組んで不敵な笑顔で言った。
「簡単によ」
「縮めてみせるんだ」
「戦前からあるってね」
 第二次世界大戦より前にというのだ。
「確かに凄いけれど」
「それ巨人だと凄くないって言うよな」
「言うわ」
 千佳も否定しなかった。
「巨人嫌いだから」
「僕もだよ」
 このことは兄妹で同じだった。
「巨人の歴史なんてな」
「どうでもいいわよ」
「そうだよな」
「だからね」
 それでというのだ。
「巨人はどうでもよくて」
「阪神はな」
「その十四年の歴史もね」 
 その差はというのだ。
「覆すわ」
「仇名でもか」
「ええ、永久欠番の数は一緒だし」 
「こっちは十と十一と二十三でな」
「こっちは三と八と十五よ」
「カープは他に準永久欠番多いな」
「まあね、けれど純粋な永久欠番は」
 そう定められているものはというと。
「その三つだから」
「同じか」
「それなら優勝の数はね」
 ここでだった、千佳は。
 自然とにまあ、と笑ってだ、兄に言った。
「悪いわね」
「二リーグ制になってからな」
「勝ってる?」
「聞くなよ、カープだから怒らないけれどな」
「千佳は巨人ファンにそう言われたらどうだ」
「切れるわ」
 何の迷いもない返事だった。
「もうね」
「僕もだよ、だからな」
「優勝のことはなのね」
「言うなよ、それに今は仇名だろ」
「その話だしね」
「永久欠番はいいとしてな」
「兎に角仇名でね」
 それでとだ、寿はあらためて言った。
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