第一章
[2]次話
最低の実父と最高の義父
結婚式を迎えてだった。
村生真礼黒髪を長く伸ばしセットして小さ目の垂れ目とやや波がかった感じのピンクの唇と長めの色白の顔を持つ一五五位の背の彼は結婚式前日に父の博文に言った。博文は顔の左に大きな黒子があり長い顔で大きな明るい目と小さな口があり陽気に笑っている顔である。黒髪は短くしていて背は一七〇位で痩せている。
「お父さんこれまで有り難うね」
「おいおい、そんなことは言わなくていいからな」
父は娘に笑って返した。
「それよりもな」
「あの人とよね」
「これからどう今以上に幸せになるか」
「そのことを考えろっていうのね」
「そうだ、わしにお礼なんかな」
日本酒を柿ピーつまみとして家にあったそれを肴に飲みつつ話した。
「いいさ」
「そうなの、けれどお母さんと結婚してくれて」
「それでか」
「この十年ずっと育ててくれたから」
「母さんと結婚して親になったから当然じゃないか」
「けれど私とお母さん前のお父さんに家を追い出されて」
「ああ、そうだったな」
父も娘の今の話にはしんみりとした顔になって言った。
「愛人さんと一緒になってな」
「その時に慰謝料も何もなくね」
「二人共身一つで追い出されてな」
「私が八歳の時ね、それから十年貧乏のどん底で生活保護も受けて暮らしていたけれど」
それでもとだ、真礼はお茶を飲みつつ父に話した。
「お母さんと結婚してくれて」
「職場でパートで必死で頑張ってる真面目な姿見てな」
「お母さんを好きになってくれて」
「交際、結婚を前提にな」
「それからだったわね」
「真礼も娘になってくれたな」
「それから人並の生活を送らせてくれて」
貧乏のどん底からというのだ。
「ずっと優しく育ててくれたからよ」
「今お礼を言ってくれたのか」
「ええ、それでこれからはね」
「彼、篤君とだな」
「幸せになるわ」
「そうなってくれ、それで式にはやっぱりか」
「ええ、呼んでないわ」
きっぱりとだ、真礼は答えた。
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