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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
熱砂の王 その3
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 ダヤン将軍との会見の翌日、早朝にマサキの元を訊ねる人物があった。
遠田(おんだ)技研の北米事務所の人間で、米国オハイオ州の日本人工場長だった。
 マサキが朝食も取らぬ内に、大量のカタログや戦術機の資料を持って来て、話し始めたためであろう。
何時もは、半日かかる「ホープ」が入った煙草の箱も、2時間もしないで空っぽになってしまった。
だが、マサキの機嫌は上々だった。

「じゃあ、戦術機の自動航法支援装置(ナビゲーションシステム)は俺の案を採用してくれると……」
紫煙を燻らせながら、満足気に応じるマサキを見ながら、北米事務所の社長は、
「博士のシステムは、弊社の遠田が考えている構想そのものなのです。
どうか、参照にさせて頂けるならば、私共も協力は惜しみません」
と、満面の笑みで応じた。
 多少、謝礼ぐらい要求しても問題はあるまい。
マサキはそう考えて、無体と思える要求をしてみた。
「フフフ、面白いやつよの。オートバイに自家用車が二台ほど欲しい。手配してくれ」
北米支社長は、唖然とした様子で、答えた。
「その様な、つまらぬものでよろしいのですか。
博士の、お役に立てるのでしょうか……」
流石に、自動車の無償提供は効いたのであろう。
不敵の笑みを浮かべながら、カタログをめくり、高級車と大型バイクを指差した。
車の方は、前世の本田技研工業の高級車『アコード』に似て居り、バイクはナナハンの名で有名な『CB750FOUR』其の物であった。

「役に立つどころか、自分の足がない俺には、なくてはならない物なんだ。
貴様の所には、たくさん有るので何よりだがな」
新しい「ホープ」の封を開けながら、男の瞳を見つめて、
「貴様等には、俺の最新式のシステムを呉れてやる。
そして、俺は日米を股にかける、有名企業の関係情報(コネクション)を手に入れる。
それを持って、俺はこの世界の戦術機業界に、乗り込む。
俺がバックに付けば、もう、他の奴等に邪魔される心配は、ないぞ」
と、紫煙を燻らせながら、満足気に答えた。

 茶を入れに来た、美久に視線を移すと、
「美久も、オートバイの一つでも欲しかろう。ハハハハハ」
と、オートバイの一つでも買ってやろうかと思っていたので、頼んでみることにしたのだ。
アイリスディーナの件で、やきもきしている美久の機嫌を取るためでもあるが、別な理由があった。
 アンドロイドである美久は、推論型Aiというすぐれた人工知能のお陰で、オートバイの運転も得意だった。
かつて鉄甲龍の首領に拉致された時、オートバイに跨り、敵に乗り込み、単騎マサキを救出したことがある。
美久が運転するオートバイの背中に跨って、アメリカの高速道路(ハイウェイ)をノーヘルメットで走るのも楽しかろう。
そんな事を考えていたのだ。

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