第二部 1978年
影の政府
熱砂の王 その3
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システムを応用した位置情報の追跡を行えばよいだけなので、然程気に留めなかった。
ただ、ゼオライマーは、今ワシントン州シアトルにある日系企業の倉庫で、整備中。
次元連結システムを使って呼び出すにしても可能だが……。
そんな事を、思案していた矢先である。
鎧衣が訊ねてきて、
「氷室さんが、誘拐された。大使館まで急ぎ来てくれ」
さて領事館では、誘拐事件の件で話し合いが始まっていた。
総領事は真剣な面持ちで、
「外交官ナンバーの車に連れ去らわれただと……」と白銀と鎧衣に訊ねた。
白銀は、平謝りにわびた後、
「申し訳ありません。ですが、ナンバーは控えてあります」
「どこだね」
「イエメン民主人民共和国の国連代表部の車です」
「南イエメンか。我が国と外交関係がない。
それに空港から逃げられたら、どうすることも出来んぞ」
それまで黙っていたマサキは、
「で、土曜の深夜22時なのに、なんでみんな集まってるんだ。
まさか、今から南イエメンに殴り込むのか。
じゃあ、俺が更地にしてきて、飛行機が止まりやすいようにしてやるよ。ハハハハハ」
と、笑って見せた。
その場に、衝撃が走った。
総領事はじめ、みな凍り付いた表情である。
「フフフ、白銀、ゼオライマーを準備しろ」
白銀の表情は、暗かった。
「南イエメンは、ソ連の支援を受けたアラブの社会主義国です」
マサキが、思っていた以上に、ソ連の魔の手は長かった。
「中東やインド洋におけるソ連の足場ですから、先日の復讐に燃える、GRUの特殊部隊が待ち構えていたらどうしますか」
と、その心にある不安を、一応あきらかにした。
GRUの特殊部隊、通称「スペツナズ」
ラオスでの戦闘経験から、危険でのキチガイじみた存在と言う事は、嫌という程、白銀自身も自覚はしている。
一例を挙げれば。1968年8月21日、「プラハの春」のときである。
ワルシャワ条約機構軍がチェコのプラハ侵攻前夜、GRU特殊部隊隊員は、難なくプラハの主要官庁を制圧した。
毅然としてマサキは、総領事の方を向き、
「知った事か。そんな、ソ連の操り人形の国、俺が滅ぼしてやるよ」と、大言を吐く。
「氷室さんは……どうするのだね」
マサキは、鎧衣の方に顔を向け、
「美久がいなくても、暴れるだけ、暴れてやるさ」
と、喜色を明らかに、うそぶいて見せた。
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