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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
熱砂の王 その3
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「博士ではなくて、奥様がオートバイですか。いや、驚きました」
 その刹那、美久の面が、ぱあと赤く色づいた。
支社長の称賛のひと声が、美久の電子頭脳に染み渡る。
「お世辞でも嬉しいです。有難う御座います」
「いや、良い奥方ですな」
他人から称賛など、久しく聞いていなかったので、なおの事、嬉しかった。

「納車の方ですが、11月、遅くとも今年中には間に合わせます。
恐らく狭山(さやま)の工場から取り寄せにはなりますが……」
「名義は俺で、俺の家と、関東の……」
 思えば、この世界の日本における住居は、城内省が用意した京都郊外の一軒家。
関東には、拠点が無いのだ。
 どうした物かと、悩んでいる時である。
丁度、白銀が入ってきて、
「おはようございます、先生。今日のご予定は……」
と、言い終わらぬ内にマサキが重ねて、
「白銀。丁度いい所に来た。お前の実家に、車を置け。
名義は俺の名義で、車庫にでも入れてすぐ使える様にしてな」
と、答えた。

「ええ、ちょ、ちょっと待ってください。俺の実家は神奈川ですよ」
「いや、いいんだ。埼玉の狭山から近いし、都合が良い。
家の親父にでも電話して、近くの代理店(ディラー)に納車させろ」
と、目を白黒させる白銀を無視して、契約書にサインしてしまった。

戸惑った様子の白銀を、横目で見ながら、
「あと、お前の百姓家(ひゃくしょうや)に遊びに行くからな。楽しみにしておれ。ハハハハハ」
と、満面に笑みをたぎらせて、
「ただで新車が手に入るのだ。文句は無かろう。それとも車は欲しくないか」
「どうして新車なんかを……」
「新規事業立ち上げの前金だよ。言ってみれば記念品の手ぬぐい変わりだ。フハハハハ」
白銀には、面前で不敵の笑みを浮かべる男の真意が分かりかねた。



 
 夕方の頃である、美久は、マサキからタバコを買ってくるよう頼まれて、ブロンクスにあるタバコ屋まで出掛けた。
マサキの吸っているタバコの銘柄は、専売公社の「ホープ」。
 何時もは、カートンで買っておくのだが、折り悪く切らしてしまった。
ただ、ドイツ駐留時は、ブリティッシュアメリカンタバコの「ラッキーストライク」で、我慢していた。
 そんな事を考えながら、頼まれた「ラッキーストライク」の両切り6カートンを両手で抱えながら、帰ろうとした時である。
 背後から、黒装束の男が、近寄る。
美久の首筋に棍棒のような物をぶつけると同時に電撃が全身を走ると、美久は意識を失った。
まもなく何者かが近づき、彼女の事をBMWのリムジンに乗せて連れ去ってしまった。
 

 マサキは、二時間ほど転寝してしまった。
20時を過ぎたころ、目が覚めた彼は、流石に帰らない美久の事が気になった。
最悪の場合、次元連結
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