第二章
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「うわ、近くで聴くとね」
「余計に下手ね」
「ルックス悪くないけれど」
「肝心の歌がね」
「どうにもならないわね」
「私こんな下手な曲はじめて聴いたわ」
「私もよ」
二人で唖然となった、そして。
二人はそれぞれの家に帰ってこの歌手のことを調べた。それから翌日クラスで彼のことを話したが。
「滅茶苦茶下手でね」
「音痴で有名になってるわね」
「福岡も路上で歌ってる人多いけれど」
「その中でダントツに下手だって」
「下手なら下手で話題になるのね」
裕香はしみじみとして言った。
「上手じゃなくても」
「そうね」
蘭もそれはと応えた。
「それならそれでね」
「そうなのね」
「まあ趣味でやってるみたいだけれどね」
「普段はお昼にサラリーマンやってるみたいね」
「それでCDも作って売ってなくて」
「路上やネットのボカロで活動してるみたいだけれど」
裕香は彼のそちらの活動のことも話した。
「けれどね」
「福岡で下手で有名で」
「ネットでもそうみたいね」
「いや、ネットでも下手過ぎるし」
「コメント欄も凄いわね」
ユーチューブであげている歌の評価はそうであった、誰もが下手それもかなりだと書いていて上手いと書いてはいない。
「下手だ下手だって」
「けれど誰も受け入れてるわね」
「視聴数やお気に入りも凄い数だし」
「下手でも受け入れてもらってるわね」
「ご本人が好きでやっていて」
「音痴でもいいなら聴いて欲しいだし」
「しかも礼儀正しいしね」
動画ではそうだった、外見はロッカーだが紳士でありちゃんとした社会人であることがわかる態度である。二人が中州で観た時も聴いて下さい、聴いてくれて有り難うございますと謡うごとに言っていた。
「真面目で」
「ネットでもね」
「中州でもだったし」
「これならね」
「人気も出るわね」
「歌いたいから歌う」
「それも礼儀正しくて真面目なら」
それならというのだ。
「下手でも聴けじゃなくて聴いて下さい」
「それなら受け入れる人もいてくれて」
「しかも好きでやってるなら」
「いいってなるわね」
二人で話した、そして。
裕香はわかった顔になってだ、蘭に言った。
「下手でも好きならやればいいわね」
「そうよね、下手とか失敗するとか笑われるとかね」
蘭もこう返した。
「そう思わないで」
「そうしたことを恐れないで」
「それでね」
「やればいいわね」
「そうよね」
二人で話した、そしてだった。
共に彼の歌を聴く様になった、その歌は確かにとんでもなく下手だ。だが二人は歌に歌う彼に好意を持った。それで聴いていった。
音痴の路上ライブ 完
2023・2・
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