暁 〜小説投稿サイト〜
DOREAM BASEBALL 〜夢見る乙女の物語〜
経験不足
[3/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
リュシーはすぐさまサインを送る。
(思考する暇は与えない。こっちのペースに持ち込む)
サインを受けるとソフィアはすぐにセットに入る。予想以上に速いテンポ、普通の打者なら構え遅れていても仕方ない場面だが、莉子にはそれがなかった。
(今の球は完全に抜けてた。でも、それを生かそうとしないキャッチャーなんていないよな?)
ピッチャーから投げられるボールは常に要求通りの物になるとは限らない。それを踏まえて引っ張っていくのがキャッチャーの仕事なら、今のボールを利用しない手はない。
(外を振らせる。でもこの場面でリスクが少ないのは三振。それなら……)
(今度は外に来る。それも振らせた上に空振りを取りに来るのなら……)
二人ともキャッチャーを経験してきた故の読み合い。そしてここでの読みは莉子に軍配が上がった。
((低めへのスプリット))
先程の投球から修正してきたソフィアはリュシーの要求通りにアウトローへのスプリットを投じる。ここから落ちてくればボールゾーンに入るため打ちたくても打てない。
(速いストレートよりもわずかに遅くなる分打ちたくなるはず。これは絶対手をーーー)
空振りにして追い込む。その戦略通りに莉子は手を出してきた。ストライクからボールへと逃げる上に先程のビーンボールの残像でバットの出が遅れ空振りになる。そうなるはずだった。
キンッ
しかし莉子はこれを読み切り流し打つ。
「なっ……」
フラフラと上がった当たり。ファーストの永島とセカンドの朝倉がこれを追いかけ、飛び込む。当たり的には打ち取った打球だったが、二人の懸命な飛び込みを嘲笑うように打球はグラウンドへとポトリと落ちる。
「ファールボール!!」
その直後一塁審判の両手が高々と挙げられる。面白い当たりではあったが打球は一塁のラインよりも外に落ちておりファール。これに莉子はタメ息を付き、リュシーは安堵の息を漏らす。
(スプリットで空振りを取る予定だったけどまさかこんなにうまく合わせてくるなんて……)
結果的には追い込むことはできた。しかし今の感じを見ると彼女はスプリットを拾う技術を持っていることは言うまでもない。
(ソフィアのボールは確かに一級品。だが、こいつはサイドスローの利点である外からさらに外へと逃げていくスライダーを持っていない)
右投げのサイドスローは右打者に強く左打者に弱いと言われる。その理由は右打者から逃げていくスライダーは有効に使えるが、左打者から見ればこのボールは非常に見易く、さらに食い込んでくるため捉えやすい。
(最初の投球より外に行くことがないのなら、最初のコースの選定さえできれば打つことはできる!!)
これまでの鬱憤を晴らすようにバットを持つ手にさらに力が入
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ