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DOREAM BASEBALL 〜夢見る乙女の物語〜 
経験不足
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『3番・ショート・水島さん』

打席に向かう背番号2。その背中を見送る背番号5はネクストバッターズサークルに入ると数回バットを振る。

(莉子さん、私まで回して)

この試合最後のチャンス。ここで同点……いや、サヨナラに持ち込めなければ恐らく明宝に勝利はない。そう直感していた優愛は昂る気持ちを落ち着けるため姿勢を低くし、下を向く。

「莉子さん、もしかしたら狙ってるかも」
「……何を?」

集中している時に声をかけてくる葉月に細目で視線を向ける。それを気にする様子もなく、彼女は顎をクイッと動かし、先輩の姿を見るように促す。

「莉子さん、たぶんホームラン狙ってるよ」
「えぇ!?マジ!?」

葉月の指摘でようやく顔を上げた優愛。その声に球審が視線を向けていることに気づいた二人は姿勢を低くし注意されないように取り繕う。

「確かに……あの顔は狙ってるかも」
「どうする?繋ぐ意識の方がヒットになる確率は高くない?」

声を出して自分たちに回すためのバッティングをお願いするかこのまま任せるか、選択肢は二つに一つしかない。

「……任せていいんじゃない?」
「その心は?」
「まぁ莉子さんだし」

優愛の何気ない言葉。彼女は本当にそれとなく呟いただけだったが、葉月も妙に納得してしまう。

「そうだね。莉子さんはいつでも何とかしてくれるし、下手に刺激しない方がいいかもね」
「ホントホント。その言い方だと怒らせないようにしてるみたいだけど」

クスクスと笑った後、葉月はベンチへと戻り打席の準備へと入る。優愛は握っていたバットを地面に置くと、立ち上がりながら大きく背伸びする。

(このピッチャーから連打は難しい。狙っていった方がもしかしたらがあるかもしれないし。まぁ、最後を決めるのは私だけどね)
















莉愛side

打席に入った莉子さんは足場を慣らすとマウンド上のソフィアさんに視線を向け、構えを取る。2アウト満塁、この試合の最終局面であることは間違いないだろう。

(外野まで行ったらホームまで帰る。外野も抜けたら紗枝だって狙ってくるだろうし)

一塁ランナーの紗枝に視線を送ると、彼女もこちらと意志疎通を取りたかったようで視線が交わる。ファーストがベースに付いていないおかげで紗枝も普段よりリードを大きく取れる分、より同点のチャンスは広がったと思う。

(あとは莉子さんが打ってくれるのを待つだけ)

ランナーにいるのなら本当は援護のために動いた方がいいんだろうけどソフィアさんは私たちのことを気にしている様子がない。これでは私たちからできることは何もない。

(莉子さん、あとはお願いします)

今までにない真剣な表情の先輩に心
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