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おぢばにおかえり
第七十二話 キャンバスライフその六十二

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「別に」
「振られた人が狸ですね」
「そういうことね」
「その人に感情移住して」
 それでというのです。
「あの人達をです」
「あそこまで嫌ってるのね」
「そうでもあります」 
 こう私に言ってでした。
 祖霊殿に着きましたのでここでも参拝しました、そして。
 新一君は祖霊殿を出てから私にまたお話しました。
「中学の時に読みまして」
「太宰のその作品を?」
「それで怖いと思ったんです」
「兎が?」
「兎もですけれど」
 それだけでなくというのです。
「自分が狸みたいになったら」
「ああ、そっちでもなのね」
「あんな仕打ち受けたらって思って」
「怖くなったのね」
「それで高校入ってあの人達のお話を聞いて」 
 それでというのです。
「尚更です」
「怖くなったの」
「それで実際にあの兎みたいな人達がいると思って」
 人達、というところも重要でしょうか。
「物凄くりっぷくしまして」
「嫌ってるのね」
「そういうことです」
「太宰にそんな作品あったのね」
 私ははじめて知りました。
「それはまた」
「教科書にも載ってますよ」
「そうだったかしら」
 高校一年の時に太宰は授業に出ましたけれど記憶にありません。
「富岳百景だったけれど」
「いえ、代表作に」
「走れメロスとか人間失格は覚えてるわ」
「他にもありまして」
「御伽草紙もなの」
「はい、太宰は色々な作品書いてますから」
 それでというのです。
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