第七十二話 キャンバスライフその六十一
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「あの兎は酷過ぎるわ」
「太宰治の小説でもありますよ」
「そうなの?」
「御伽草紙といいまして」
作品の名前も言ってくれました。
「色々な童話を題材にして書いてるんですが」
「太宰にそんな作品あるのね」
ちょっと意外でした。
「あの人時期によって作風変わるのは知ってるけれど」
「最初は暗くて自殺する前も暗いんですよね」
「それで真ん中が明るいのよね」
「その真ん中の作品で」
所謂中期のというのです。
「それでなんです」
「中期の作品で明るいのね」
「それでかちかち山もありまして」
「やっぱり兎残酷なのね」
「狸は兎を好きになるんですが」
この辺りは原作の童話と違うみたいです。
「ああしてです」
「殺されるのね」
「最後の台詞が凄くて」
「どんなのなの?」
気になって尋ねました。
「一体」
「惚れたが悪いかと言って」
それでというのです。
「溺れさせられて」
「ああなるのね」
「狸も悪いですが」
新一君は難しいお顔で言いました。
「ですがそれでも」
「自分がそうなったら」
「それで僕あの人達を連想しまして」
「長池先輩達を?」
「あの人達のしたことはその兎と同じに」
その様にというのです。
「思えて」
「あそこまで嫌ってるの」
「そうなんです」
「嫌い過ぎだけれどね」
「僕が狸だったら」
「新一君は惚れてないでしょ?」
というか先輩達に初対面から嫌いオーラ全開でした、睨んでそして敵意も口もこれでもかと向けていました。
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