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同じ曲を三ヶ月
第二章
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「勝てますか」
「そうよ、貴女はもうそれなりの実力はあるから」
「三ヶ月ですか」
「ずっとよ」
「その曲だけをですか」
「練習して勉強するのよ、いいわね」
「それで本当にお姉ちゃんに勝てるなら」
 それならとだ、麻美も頷いてだった。
 言われた通りにコンクール用の曲を必死に練習した、三ヶ月の間その曲に専念し勉強もその曲だけにした。
 そしてコンクールに挑むと。
「前までお姉さんと比べると」
「流石に落ちたけれど」
「今回は違うな」
「ああ、お姉さん超えたんじゃないか」
「そうだよな」
 こう評価を得てだった。
 麻美は見事優勝した、これまでも優勝はしたが。
「はじめてです」
「お姉さんに勝てたわね」
「はい、そのことをです」
「貴女も実感したわね」
「完璧な演奏が出来ました」
「ずっとその曲だけを練習して勉強したら」
 そうすればとだ、美佑は麻美に話した。
「その曲を極められるのよ」
「そうなんですね」
「そう、だからよ」
「私に三ヶ月の間ずっとですね」
「どうしてもお姉さんを一曲でも超えたいと言ってたから」
 そして心から思っていたからだというのだ。
「アドバイスしたけれど」
「有り難うございます、これで出来ました」
「あと貴女のピアノも見付かったかしら」
「はい、お姉ちゃんは色々な曲を演奏して」
「貴女はね」
「一曲を。レパートリーは少なくても」 
 曲のそれはというのだ。
「その曲を完璧にしていく様にします」
「それでいいのよ、これまではお姉さんを見てお姉さんみたいにどんな曲でもって思ってたでしょ」
「はい」
 麻美もその通りだと答えた。
「それは」
「けれどご両親には貴女は貴女って言われてたわね」
「こういうことですね」
「そう、だからね」
「これからはですね」
「一曲一曲をね」
「完璧にですね」
 麻美は自分から言った。
「演奏出来る様になる」
「そう言っていってね」
「わかりました」
 麻美は笑顔で応えた、そうしてだった。
 麻美はレパートリーは少ないが一曲一曲を完璧に演奏するピアニストとして知られる様になった、そして。
 多くの曲を極めて高い水準で演奏する姉とは別のタイプのピアニストとして知られる様になった、すると自然と自信も出て。
 コンクールの時のドレス姿も評価される様になった、そして高校を卒業し大学を出ても活動をしてもだった。
 姉とは違うタイプの優れたピアニストとして知られた、だが姉妹仲はずっと変わらずそのままだった。
「今度はロンドンに行くのね」
「ええ、それでチャイコフスキー演奏するから」
 実家で姉にコンクールに行く準備をしつつ応えた。
「くるみ割り人形ね」
「そうなの、じゃあ頑張ってきてね」
「そうするわね
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