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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第85話 アトラハシーズ星系会戦 その1
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ちらが後退するタイミングじゃな」
 言下一閃、爺様はあっさりと俺の進言を却下する。確かに原作のマル・アデッタ星域会戦では回廊内に事前に機雷を配置していた。進撃行動中の艦隊の行動としては消極的過ぎるし、それで敵がこちらの防御心理から、自己の数的優位を認識して速攻に出られる可能性もある。
 よりダイナミックに、機雷源を敷設して敵の正面攻撃を避けつつ、驍回運動により敵側面を突く疾風のような戦術行動を期待するには……時間もさることながら部隊の練度がまだまだと言わざるを得ない。

 一一一八時。

 もはや偵察艦艇ではなく、各艦の搭載する探知装置で認識できる位置まで第四四高速機動集団第一部隊は帝国艦隊に接近した。爺様は既に第一級臨戦態勢を指示している。

「先に発見せる敵は、星系標準水平面に沿って台形陣を形成。数一五四〇」
「現在の敵の方位、当艦隊進路方向〇〇二五時。敵中央部までの距離七・五光秒」
「機動集団基準有効射程迄、あと二〇分」

 司令艦橋所属のオペレーターの報告が続々と上がってくるにつれ、俺の胃からも胃酸が上がってくるように思える。初陣はケリムでの海賊戦、それからマーロヴィア、エル=ファシル、アスベルンと戦ってきた。いずれも戦力的には優勢な立場だったが、今度は圧倒的に不利な立場だ。

「敵戦力、巡航艦戦隊が前衛を形成。その後方に戦艦と思しき主力部隊を確認」
「後衛に宇宙母艦群を確認。その周囲に駆逐艦戦隊を確認」

 帝国軍の指揮官は極めて常識的な陣形を形成している。打撃艦艇を前衛・中央に、母艦群は護衛を付けて中央後方に。正面砲戦により直進し一撃でこちらの前衛を粉砕、接近戦に持ち込んで勝負をつけるということだろう。隊列に隙らしい隙が全く無い。分隊単位ですら定規で計ったような戦列、上下左右どの方向に対しても、攻撃・防御・支援が可能な態勢をとっている。戦力的な不均衡・不均一性もない。まるで教科書のように重厚な台形陣だ。

「敵中央部に識別可能な艦艇を確認。現在データ照合中……」

 既に望遠目視ですら可能な距離だ。自動で敵艦を確認・照合するシステムが作動していて、データベースで照合できるような『名のある艦』があったという事か。通常戦艦でも指揮官が座乗指揮する艦艇のデータについてはフェザーンでもよく収集することがあったが、特に帝国側は指揮官に貴族が多いせいか、自己顕示欲の表れか巨大で武骨ながら派手な艦艇が多い。

「艦形照合。敵陣重心点付近に位置する識別可能艦艇は、戦艦ネルトリンゲンと判明」

 オペレーターの報告と共に、俺の端末画面上で回転する帝国軍戦艦の姿は、標準戦艦を縦に伸ばした、横から見たら銃身の太い拳銃のようだった。





 戦艦ネルトリンゲンがここにいる。

 帝国軍の将官は、大将
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