第85話 アトラハシーズ星系会戦 その1
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、それも旗艦直轄部隊のような中核重装部隊編成。だいたい宇宙母艦が五〇隻も集中運用されているなど悪夢に近い。
「制式艦隊が解散して、中核部隊をそのまま前線に配置転換した、ということか」
モンシャルマン参謀長は喉を鳴らしつつそう言った。確かにそうともとれる編成だ。有人星系の警備部隊のようなきめ細やかな哨戒よりも、接敵することが目的の星域防衛艦隊。本来であれば機動性よりも容積制圧火力に特化している宇宙母艦はお呼びではない。
そして同盟軍の宇宙母艦と違って、帝国軍の宇宙母艦は通常戦艦より個艦戦闘能力においても重武装である。通常戦艦ですら同盟軍に勝る艦載機搭載量がある故に配備重要度は低く、制式艦隊同士の会戦でも滅多にお目にかかれるものでもない激レア艦ではあるが、別に遭遇したからと言ってうれしくもなんともない。
こちらの戦力は八〇九隻。戦艦一〇六、巡航艦三四五、駆逐艦二七七、宇宙母艦五、補給・支援艦七六。単純な数的比率は一対二であっても、砲戦参加面積は一対三、艦載機搭載量だけで言えば一対八。まともに真正面からぶつかれば、壊滅まで持って三時間というところ。
これはやはり一団で行動すべきであったか。今更ながらに自らの浅知恵を後悔しつつも、仮に二四〇〇隻が一団で行動したとしても、やはり総火力においては殆ど互角で意味はなかったと判断せざるを得ない。その上、現場に一六〇〇隻しかいないということは、事前情報よりも少ないということだから、敵にも別動隊がいるのも間違いない。やはり想定通り遅滞戦術をとられた挙句、後背からの奇襲を受けることになる。
敵がこちらをその射程下に収めるにはまだ僅かだが時間はある。逃げ出せないこともないが、逃げたら逃げたで味方別働隊を見捨てることになる。別動隊は数では互角であっても、艦艇構成は本隊とさほど変わらない。
「情報参謀」
決断を迫られていると理解している爺様は、唇を噛み締めているモンティージャ中佐を呼び寄せた。
「敵艦隊の部隊構成を別動隊に伝達できるか?」
「可能ではありますが、この距離ですと発信源を特定され、場合によっては解読される恐れがあります」
「そんなものは今更じゃ。敵は既に儂らの存在を把握している」
腕を組み、深く司令官席に腰を下ろしている爺様は、中佐の諫言を鼻で笑い飛ばした。
「ジュニアのおかげで辛うじて勝ち筋が見えておるのに、余計な心配せんでもよい。通信が送れるなら、速やかに『交戦予定時刻繰り上げ。一二〇〇時』と発信せよ」
それは一体どういうことか。勝ち筋どころか負け筋を作った俺にとっては、爺様が皮肉を言っているようにも聞こえるが、自信満々の爺様の顔を見るにそうとも思えない。それにそういう通信を出せば、別動隊は航行速度を上げると共に予定ルートを早いうちに変更するこ
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