第85話 アトラハシーズ星系会戦 その1
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宇宙歴七九〇年 二月一七日 アスターテ星域アトラハシーズ星系
〇三〇〇時。偽装艦隊の準備が整い第四四高速機動集団は進撃を開始する。三〇分前に第八七〇九哨戒隊はヴァンフリート星域方面への跳躍宙点へ向けて艦隊を離脱している。一度方針が決まれば、事態の動きは速い。
既に作戦は第二・第三両部隊にも伝達済みで、敵部隊の戦力が判明し数的不利が確認され次第、司令部からの暗号通信によって作戦の中止、および星系からの強行離脱を指示済みだ。敵に偽装艦隊の内情を把握させるのを遅らせる為にもある程度の無線封止状況下にせざるを得ない為、通信は指向性の高いビーム通信を使用することになる。通信量は最低限にならざるを得ない。状況によっては両部隊指揮官独自の判断力に期待することになる。
先発した偵察隊から敵戦力の情報は届いていない。第四四高速機動集団に所属している強行偵察型スパルタニアンの数は限られている上、星系内は広大だ。妨害もあるだろうし、敵が第U惑星の衛星軌道上に留まっていた場合、搭載されるパッシブセンサーの有効範囲内に収められる位置まではこれより五時間はかかる。
爺様は偽装艦隊の放出と別働部隊の運用に異常がないことを確認した〇四〇〇時。麾下全艦将兵に二交代で二時間ずつ休息をとらせた。情報が入るまでは心配してももはや無意味であるし、戦いが始まれば恐らくは不眠不休となる。この時ばかりは俺もタンクベッド睡眠をとった。戦場で見る夢は悪夢だけだろうが、背に腹は代えられない。
最初に敵の情報が入ったのは〇九〇五時。敵戦力は約二〇〇〇隻。第二惑星の衛星軌道上より第三惑星軌道に向かって移動を開始していた。以降の通信は途絶えたが、情報が確かならば敵の指揮官はこちらの部隊が本物と考え、その頭を押さえるべく行動を起こした、と思われる。つまり、こちらの動きについても同様に敵に知られていると見ていい。
推定される敵戦力との会敵予想時刻は一二三〇時。会敵位置は第二惑星軌道と第三惑星軌道のほぼ中間。第二惑星軌道上に到達しつつある別動隊がこのスパルタニアンの報告を受信していれば、事前の打ち合わせ通りに動いてくれる……はずだ。
第二報は一〇〇三時。最初に報告してきたものとは別のスパルタニアンからで、より詳細な敵戦力のデータがもたらされた。
「敵の総数は一五〇〇隻ないし一六〇〇隻。戦艦一八〇ないし二〇〇。巡航艦七〇〇ないし八〇〇。駆逐艦四〇〇ないし五〇〇。宇宙母艦五〇隻弱。ほか補助艦艇が一〇〇隻程度とのことです」
ファイフェルの報告に、俺を含めた戦艦エル=トレメンドの司令艦橋に集まった第四四高速機動集団司令部の顔色は悪い。まずもって初手に数的不利なのは分かっていたが、敵の艦艇構成がとても前線哨戒を主任務とする防衛艦隊とは思えない……まるで制式艦隊の
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