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八条学園騒動記
第六百八十七話 カナディアンサンドイッチその四

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「鯨はあまりね」
「食べなかったんだ」
「そうだったのよ」
「そんな頃もあったんだね」
「それでカナダではその頃はね」
「鯨食べていなかったんだ」
「イヌイットの人達が食べていたわ」
 この人達の文化はこの時代でも残っている、ただし連合の他の民族と同じくかなり混血が進んでいる。
「その頃はね」
「ああ、あの人達が」
「極寒の場所に住んでいて」
 北極圏、そこにだ。
「それで氷のお家に住んでいて」
「それでだね」
「そう、自然の中で暮らしていて」
「狩猟や漁業で」
「それで鯨も獲って」 
 これは漁業になる。
「それでよ」
「食べていたんだね」
「そうだったのよ、けれど多くのカナダ人は」
「食べていないね」
「その頃はね、けれど」
「それが変わったんだ」
「そう、時代が変わっていって」
 そうしてというのだ。
「連合全体が色々なものを食べる様になって」
「その中でだね」
「鯨も食べる様になったのよ」
「鯨美味しいけれどね」
 シッドはその味のことを話した。
「けれど昔はなんだ」
「カナダでは食べる文化がなかったのよ」
 そうした食文化がというのだ。
「油を取る位ね」
「鯨油だね」
「それが照明になっていたから」
 そのエネルギーにだ。
「だからね」
「捕鯨はしていたんだ」
「十九世紀とかはね」
「そう言えば白鯨も捕鯨だったね」
 シッドはこの小説のことを思い出した。
「メルヴィルの」
「アメリカのね」
「捕鯨をしていてね」
「それで白鯨をね」
「エイハブ船長が追い求めていて」
 自身の右足の仇のだ、この作品はこの人物の妄執も作品の主題になっている。
「海を進んでいるね」
「そうでしょ、何故捕鯨をしていたか」
「食べる為じゃなくて」
「油を取る為だったのよ」
「油取ったらそれで終わりだったね」
「当時の捕鯨はね」
 こうシッドに話した。
「日本は食べる為だったけれど」
「そこが違うね」
「日本では食べて」
 鯨の肉をというのだ。
「身体の隅から隅までね」
「使っていたね」
「骨やお髭までね」
 そうしたものまでというのだ。
「使ってね」
「捨てるところがなかったね」
「よく豚は捨てるところがないっていうけれど」 
 それこそ声以外全て食べられるとだ、連合では言われている。
「けれどね」
「それでもだね」
「鯨もそうだけれど」
「日本では最初からそうしていたんだね」
「白鯨の頃にはね」
 既にというのだ。
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