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展覧会の絵
最終話 幸せな絵その七

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 その和典がだ。こう十字に答えたのだ。
「だから特に」
「そう。けれどね」
「神様はいるんだね」
「そして全てを御覧になられていてね」
 そのうえでだというのだ。
「僕にもこうしてね」
「描かせてくれるんだね、絵を」
「うん。絵も他の行動も」
 描きながら言っていく。
「そうなっているよ」
「成程ね。全ては神様がなんだ」
「そうだよ。ただ今思うのは」
「今はって?」
「描きたいね。これからも」
 こう和典に答えた。
「是非共ね」
「そうなんだ。佐藤君も幸せな絵が好きなんだね」
「幸福。それはね」
「それは?」
「人が手に入れるべき当然のことだからね」
 それ故にだというのだ。
「だからこそね」
「幸福を求めて手に入れることはなんだ」
「神が最も楽しみとされるのは」
 それは何かともだ。十字は話す。
「笑顔だからね」
「人の笑顔だね」
「そう。純粋で明るい笑顔」
 それが神が最も喜ぶものだというのだ。見てだ。
「だからね。僕もこうして描く絵は」
「明るい絵が好きなのかな」
「僕は描く絵は選べないけれどね」
「それでもかな」
「暗い絵を描く時は厳しい気持ちなんだ」
 何故そうした感情になっているのかは言わない。それは隠している。
「そしてこうして明るい絵を描く時は」
「楽しい気持ちなんだね」
「そうなんだ。けれどそれはわからなかったよね」
「言ったら悪いけれど」
 こう前置きしてからだ。和典は十字に答えた。
「佐藤君は表情がないから」
 それ故にだというのだ。十字の仮面の如き無表情、そして声もまた極端なまでに感情の起伏に乏しい。それならどうしてもだというのだ。
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