第八十六話 恋愛のダメージその十一
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「馬鹿な思想家もいるのよ」
「それでその馬鹿な思想家がですね」
「吉本隆明よ」
「やっぱりそうですね」
「戦後最大の思想家とか言われてるけれど」
「その程度ですね」
「その程度と呼ぶのもね」
これもというのだ。
「値しない様な」
「そんな人ですから」
「訳の分からない文章書いて挙句はテロやるカルト団体の教祖褒めるのよ」
「そう言うと確かに酷いですね」
「そんなのの本読むなんて無駄としかね」
その様にというのだ。
「私思えないし読むならよ」
「漫画とかラノベとかですね」
「純文学もね、そういうのを読む方が」
「遥かに自分の為になりますか」
「難しい文章読むのが凄いんじゃないの」
先輩はこれまた強い声で語った。
「真実に触れて知ることがよ」
「凄いんですね」
「そう、そもそも難しい文章なんて」
そうしたものはというのだ。
「実は中身がないなんてね」
「そんなことがありますか」
「クラシックや歴史のお話だと」
それならと言うのだった。
「そうした分野の知識が必要でしょ」
「正直私クラシックとか詳しくないです」
咲は自分はそちらに無知であることを正直に話した、実際に彼女はそちら方面についての知識は疎い。
「モーツァルトとか言われても」
「じゃあモーツァルトについて書いてる本わからないわよね」
「全く」
「モーツァルトについて書かれた本を読むならね」
「モーツァルトについての知識が必要ですね」
「そうよ、けれど知識があったらね」
モーツァルトへのそれがというのだ。
「わかるから」
「そういう場合はいいんですね」
「そう、その作品を読むにはそれに相応しい教養が必要なものもあるのよ」
「専門書とかですね」
「科学の本なんて特にでしょ」
「そうですね、科学の知識がないと」
到底とだ、咲も答えた。
「わからないです」
「だから事前に勉強すればね」
「読める本があるんですね」
「そうした本は知識や教養があればね」
それでというのだ。
「わかるのよ」
「難しい文章じゃないですね」
「それを妙に漢字とか横文字とか造語使って」
その様にしてというのだ。
「何を書いてるかわからない文章書いたら」
「駄目ですね」
「その場合はね」
まさにというのだ。
「吉本隆明よ」
「まさにその人ですね」
「もう本当に何を書いてるかわからない」
「そんな難しい文章はですね」
「実は何でもないのよ」
「大事なものはないんですね」
「真理は常に明解である」
先輩はまたしても言い切った。
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