第二章
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「新しいものだから故障したりね」
「事故もな」
「目の中、頭での事故はね」
「かなり危ないな」
「ええ、けれど見えるのなら」
「やってみるか」
「そうしましょう、無料だし」
「ああ、試験で使うしな」
開発する企業側がというのだ。
「そうした意味でも条件がいいな」
「事前に実験されていて安全性も確かめられているし」
「別に爆発とかショートとかはしないらしい」
「それじゃあね」
妻は母として夫の言葉に頷いた、そしてだった。
実際にだ、その義眼を娘の右目に入れると。
「うわ、本当にね」
「右目もか」
「見えるのね」
「これが両目で見えることね」
娘は両親に嬉しそうに言った。
「ずっとわからなかったけれど」
「見える様になったんだな」
「その義眼のお陰で」
「ええ、嬉しいわ」
実際に跳びはねんばかりで言うのだった。
「じゃあこれからもね」
「その義眼使うか」
「そうしていくのね」
「そうするわ」
こう言ってだった。
詩織はその義眼を使い続けた、試験用で無料だったものが実用化されても企業からの好意確かに裏に宣伝の思惑もあったがそのまま無料で使われる様になり。
詩織は両目が見えることを喜んだ、そんな娘を見てだった。
それでだ、博光は雅に話した。
「昔は夢みたいな話だったけれどな」
「無眼症で見える様になるなんて」
「けれど医学も科学も進歩して」
「見える様になったのね」
「ああ、無理だと思ったこともな」
「出来る様になるのね」
「文明が進歩したらな」
それならというのだ。
「出来る様になるんだ」
「よく言われてることだけれど」
「詩織もなんだ」
「そうなのね」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「これからもな」
「文明はよね」
「進歩させていかないとな」
「そうすれば助かる人も増えるわね」
「詩織だけじゃなくてな」
「そうね、それじゃあ」
「人間はこれからも頑張っていかないとな」
そうして文明を進歩させていこうとだ、夫は言ってだった。
妻も頷いた、そして見える義眼とそれを開発した人達に心から感謝したのだった。文明の進歩に対しても。
義眼でも見える様になる 完
2023・2・20
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