第一章
[2]次話
義眼でも見える様になる
誰にも言わない様にして幼い頃から両親に言われて訓練も受けていてだ。
坂口詩織は右目が見えないそれも眼球がない無眼症であることを隠していた、黒いショートヘアで丸めの顔で大きなはっきりした目と細く長い眉に大きめの明るい赤い口元である。小学六年生になる。
「お母さんが右目まで産んでいたら」
「いいわよ、左目見えるし」
よく申し訳なさそうに言う母の雅自分そっくりの彼女にこう言っていた。
「そんなに言われないしね」
「だからいいのね」
「うん、気にしないで」
こう言うのが常だった。
「右目位何でもないよ」
「そうなのね」
「それに右目にはこれ入れてるし」
こう言って右目の義眼を指差した。
「ちょっと見たらわからないから」
「だからなのね」
「うん、お母さんは気にしないで」
笑顔で言って自分はこうした身体なのだと思って生きていた、また家の方も彼女が障害者であると認定されていてそのサポートも受けられてその分負担も楽になっていた。しかし母も父の博光一七〇位の背で太って穏やかな顔に右で分けた黒髪のサラリーマンの彼もだった。
娘の右目のことがどうにも気になっていた、だがある日。
「それ本当!?」
「ああ、八条グループの方でな」
「そんな義眼が開発されたの」
「そうらしいんだ」
夫は家で妻に話した。
「何でもな」
「夢みたいなお話ね」
「ああ、見える義眼なんてな」
「そんなものが開発されて」
「それでテストだけれどな」
それでもというのだ。
「無料で使用してもな」
「いいのね」
「だから故障や事故のリスクもあるが」
「もうこれまで実験もされていて」
「安全性もある程度でも保証されているしな」
「私達もなのね」
「ああ、申請すればな」
そうすればというのだ。
「その義眼が使えるんだ」
「そうなのね」
「そうしたらな」
「詩織は右目も見えるのね」
「そうなるんだ、どうする?」
「確かにね」
一旦だ、雅は少し考えてから夫に答えた。
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