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ハッピークローバー
第六十六話 泳ぎながらその三

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「あんたもよかったらね」
「横浜に行けばいいっていうのね」
「そうしたらいいよ」
 こうも言うのだった。
「一度でもね」
「横浜ね、実は行ったことあるのよ」
 富美子は薊に笑って答えた。
「家族で神奈川に旅行に行った時に」
「いいところだろ」
「奇麗な街よね、中華街楽しいし」
「だろ?あたしあそこによく行ったんだよ」
 中華街の話が出てだ、薊は陽気に応えた。それはまさに自分の故郷を振り返ってそのうえで応じるものだった。
「暇があったらね」
「よく行ったの」
「それで遊んだよ」
「馴染みの場所ね」
「ああ、じっちゃんも元々華僑でな」
「そうなのね」
「何か中華街があるって」
 薊はこのこと自体についても話した。
「アジアじゃ韓国と北朝鮮以外っていうしさ」
「何処でもあるのね」
「最近韓国でも出来たっていうね」
「そうなのね」
「昔はあったらしいんだよ」
 薊は少し真面目な顔になって富美子に話した。
「韓国にも」
「そうだったの」
「しっちゃんが言うには戦争前はな」
 第二次世界大戦前はというのだ。
「ちゃんとな」
「日本が統治していた頃ね」
「ソウルにあったらしいんだよ」
「へえ、それは初耳ね」
 富美子は横浜そして自分達が通っている学校のある神戸のそれぞれの中華街を思い出しながら応えた。
「ソウルにもあったの」
「それが戦争が終わってさ」
「なくなったの」
「あっという間にな」
「それでずっとなかったの」
「そうらしいんだよ」
 最近までというのだ。
「あと大阪にもあったっていうな」
「へえ、そうなの」
「昔はな」
「私中華街好きだけれど」
 それでもとだ、富美子は話した。
「日本は少ないらしいわね」
「横浜と神戸、あと長崎か」
「三つ位よね」
「横浜のが一番大きくてな」
 薊は規模の話もした。
「次は神戸で」
「一番小さいのは長崎なの」
「ああ、それで大阪にもな」
「中華街あったのね」
「それでソウルにもあったんだよ」
「昔の日本の方が中華街多かったのね」
 富美子はしみじみとした口調で述べた。
「そうだったのね」
「みたいだね、昔は韓国も日本だったしね」
「そうよね、併合して」
「何でも華僑の人がソウルに中華街作りたいって言ったら」
「そうしたらなの」
「日本の総督府か」
「あそこがなのね」
「快諾してな」
 当時の日本政府の八紘一宇や五族共和の政策に相応しくてだったという。
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