第十八話 我が子を喰らうサトゥルヌスその四
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「何も盗んではいない」
「それもその通りです」
「殺人も窃盗も犯していない。そして傷害もだ」
犯罪と考えられるものの中で重罪とみなされることはだ。一切していないというのだ。
「そうしたことはしていない。それにだ」
「今度は何でしょうか」
「君が私をこうして拘束していることは絶対に言わない」
今度は取引だった。それにかかったのだ。
「解放してくれればだ。言わない」
「絶対にですか」
「言う筈がないだろう。勿論君が叔父さんやあの四人を殺したことも言わない」
一郎は十字、黒いガラスの様な目の輝きを暗いコンクリートの部屋の中で見せる彼に話していく。この状況でも何とか助かろうと必死なのだ。
「藤会のこともだ。それに話してもこんな話は誰も信じない」
「証拠は全く残していません」
「なら大丈夫だ。私は何も言わない」
「いえ、言えないです?」
「言えないだと?」
「貴方はここで死ぬからです」
感情のない言葉でだ。十字は一郎に告げていく。
「だからです。言えないのです」
「では君はやはり」
「貴方は罪を犯しました」
「私が殺される罪は何だ」
「近親相姦」
知っていた。このことも。
「神に対する冒涜に他なりません」
「そのことも」
「知っています。神は全てを御覧になられていますから」
神の僕である彼もだ。それにより知っているというのだ。
「そしてです」
「まだあるのか」
「薬と肉体の快楽に溺れ少女を弄んできましたね」
「彼女のことか」
春香のことだとだ。一郎は今まさに喉元まで来た死の恐怖に怯えながら十字に返した。
「そのこともまた」
「全部知っています」
僅かではないというのだった。
「そのこともまた」
「くっ、それも罪なのか」
「そうです。そして最後に」
裁きの代行を下すに値する罪の最後の一つ、それは。
「彼女と彼の心を殺しました。心を殺す殺人を犯しました」
「しかしあの二人はもう」
「心は甦りますが死ぬのもまた事実」
無論この中には春香の自殺未遂のことも入っている。今の十字は告発者、糾弾者でもあった。
「だからこそ僕は貴方の肉体と精神を殺す裁きの代行を下します」
「ではどうするつもりだ」
「今からはじめます」
こう言ってだ。何処からか。
万力、小さなそれを出してきた。それを使ってだ。
まずは一郎の剥き出しになっていた睾丸と棒を挟んだ。そうしてだった。
万力をゆっくりと狭めていく。それが狭まるにつれて。
睾丸と棒はその間に押されていく。ゆっくりと、だが確実に鈍い痛みが迫ってきていた。
一郎はその痛みに声をあげる。命乞いもする。
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