暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
GX編
第147話:乾いた大地に水を撒く様に
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、馬鹿ッ!? 自分だって限界ギリギリなのに無茶する奴があるかッ!?」
「馬鹿で結構。だが無茶した甲斐はあったみたいだぜ?」

 そう言って颯人が指さした先には、無造作にベッドの上に投げ出されたハンスの片手がある。その手の指が、ほんの僅かにだが動いた。

「ッ! アルドさん、ハンスの指がッ!」
「ッ!!」

 急いでアルドがハンスに近付き、手を取って神経を集中させる。誰もが固唾を飲んで見守る中、アルドは小さく息を吐いた。

 それが何を意味しているのか、響達には分からない。だが悲壮さは感じられないので、何かしらを期待しても良いのではと感じた。そしてそれは間違ってはいなかった。

「……枯れた大地に水を撒く様なものです。この程度で彼の容態は回復しません。ですが……」
「枯れた大地にも、種はある。小さな種が僅かな水で芽を出し、育ち、増え、森に成長する事だってある。そう言う事か?」
「正直、諦めていましたが……もう少し、足掻いてみるのも良さそうですね」

 そう言ったアルドの口元には、微かにだが笑みが浮かんでいる。それを見て室内に喜びが広がった。

 ハンスにはまだ助かるだけの余地がある。それを実感し、響は先程とは違う涙を流した。

「やった! キャロルちゃん、ハンス君は助かるかもよ! やったね!」
「うん……うん!」

 先程全てを忘れたキャロルに避けられた事等もう忘れて、喜びキャロルに抱き着く響。キャロルの方も、ハンスに回復の余地があると分かり喜びが勝ったのか、響を振り払ったりするようなことはしない。

 喜びに満ちる室内の様子を、颯人は満足そうに眺め……そして唐突に脱力し崩れ落ちた。それを奏が慌てて支えた。

「わたたたっ!? お、おい颯人、大丈夫かッ!?」
「あ゛〜……流石にそろそろ限界だわ。後は任せる」
「ったく、無茶するんだから。……お疲れ、颯人」

 意識を手放し、眠りに落ちていく颯人を奏は優しく見つめ、その頬にそっと口付けを落とす。誰にも見られないようにと素早く落とされたキスに、颯人は感触だけで気付き眠りに落ちながら笑みを浮かべる。

 その颯人の耳に、キャロルの声が届いた。

「あの…………ありがとう」

 薄れゆく意識の中、耳に届いたキャロルの声。颯人は言葉に出さず、胸の内だけでその言葉に答えた。

――言ったろ? 俺は奇跡を生み出す男だって。この程度、楽勝よ――









 その後、戦いも終わり戦士達には平和な日常が訪れた。

 響達リディアンの学生達は待ちに待った夏休み。透の学校も同じく夏休みに入ったので、日々をクリスと共に過ごしている。
 尚そこには、夏休みの宿題に追われている切歌と調の姿もあり、透はクリスと共に頭を悩ませる2人を
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