暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
GX編
第147話:乾いた大地に水を撒く様に
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問われ、アルドは一度彼女の事を見るとキャロルを毛布毎優しく抱き上げ近くのベッドの上に移してから医務室の奥にある集中治療室へと向かった。
 無言で移動するアルドの様子に嫌な予感を感じた響達が、後に続いて集中治療室に入るとそこにはベッドの上で静かに目を瞑っているハンスの姿があった。

 ハンスはまるで死んだようにピクリとも動かず、胸の上下する様子から生きている事を察する事が出来た。

「アルドさん、ハンスはどういう状態なんですか?」

 エルフナインが訊ねるが、想像はついていた。ハンスは想い出を焼却しすぎたのである。

 そもそも彼が戦いの際に使っていたビーストドライバーは、まだまだ技術が完全に伴っていない時代の遺物。それ故に魔法の行使の際には自らの命を削る事で魔力を捻出していた。それに加えて彼は想い出の焼却も行いブーストを掛けていたのだから、その代償が大きいのは当然だ。正直な話、死んでいないのが奇跡である。

 アルドの口からそれらの話を聞かされ、装者達は沈痛な面持ちになった。

「……皮肉なものだな。奇跡を殺すと謳っていたいたキャロルと生涯を共にしていたハンスが、奇跡によって辛うじて命を繋いでいると言うのは……」

 翼の呟きに誰も何も言わない。皆大なり小なり似たような事を思っていたからだ。

 特に響の表情は殊更に暗い。確かにキャロルは辛うじて救われたのかもしれない。だがハンスがこれでは、とてもではないがめでたしめでたしとは言えなかった。

 誰も何も言えず沈黙する中、声を上げたのは装者でも魔法使いでもなかった。

「ハンス……?」
「ッ!? キャロル、ちゃん……」

 呆然と声を上げたのは、何時の間にか集中治療室に入って来ていたキャロルであった。肩に毛布を引っ掛けた状態で入って来たキャロルは、物言わずベッドの上で眠り続けるハンスに覚束ない足取りで近付いた。

「ハンス? ハンス? どうした? 目を開けてくれ……」

 キャロルが揺するが、ハンスは目を開けるどころか声一つ上げない。何も言わず眠り続けるハンスに、キャロルは彼の手を取り両手で握り締め涙を流した。

「嫌だ……嫌だ……1人にしないでくれ…………もう俺には、お前しか…………!?」

 弱々しく涙を流すキャロルの様子に、堪らずエルフナインがどうにかならないのかとアルドを見た。

「アルドさん、ハンスを治す事は出来ませんか?」
「正直、難しいと言わざるを得ません。今の彼の中は空っぽの状態。この状態から元に戻す事は、流石に…………」

 ハンスの治療は不可能だと告げるアルドの答えに、キャロルのすすり泣く声が重なる。非情な現実に、キャロルの悲しみが伝播したのか響・クリス・調・切歌の4人も目に涙を浮かべた。

 しかしそれを打ち消
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