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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
GX編
第147話:乾いた大地に水を撒く様に
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何処なんだ?」
明らかにおかしなキャロルの様子に、全員の視線が再びアルドに集中する。否、エルフナインだけは凡その察しがついているのかキャロルに対し痛ましい視線を向けていた。
「なぁアルド? ありゃぁ、一体……?」
今までの姿と結びつかないキャロルの様子に、奏が問い掛けるとアルドは隠れたキャロルにそっと手を伸ばし優しく椅子へと誘導し座らせた。
「ごめんなさい、もう一度聞かせてくださいね? まず、あなたの名前は?」
「俺は……俺は、キャロル。うん、キャロルだ」
「ファミリーネーム……キャロル以外の自分の名前は?」
「…………分からない」
「お父さんとお母さんはどちらに?」
アルドがキャロルに対して色々と質問するが、明確な答えが返って来たのは”キャロル”と言うファーストネームのみ。それ以外の自分の事は何も分からないと言う様子だった。
愕然とする響達に、エルフナインが重苦しさを感じながら口を開いた。
「記憶が……大分失われてしまったんですね」
「はい。やはり力を使い過ぎていたらしく、反動で記憶の大部分が失われていました。処置を施してあるのでこれ以上記憶が失われる事はありませんが、それでもキャロルさんは自分と、”彼”の事以外の全てを忘れてしまったようです」
それは何と残酷なのだろう。云わば今のキャロルは、何も分からぬ、何も知らぬ場所に一人ぼっちでいるようなものだ。自分が何の為に戦ってきたのかも何も分からぬ、誰が信用できるのかも分からないと言うのはどれほど恐ろしい事か。奏達には想像する事も出来ない。
だがそんな彼女にも、一つだけ希望が残っていた。
「彼……と言うのは、もしかして?」
その”彼”の存在に気付いたマリアがその名を口にしようとすると、それよりも早くにキャロルが彼の名を呼んだ。
「ハンス……ハンス? 何処? 何処に居るの? 寂しいよ……1人に、しないで…………」
怯えて体を震わせるキャロルが何度も口にするのは、彼女と共に歩んできた少年の名前。震えるキャロルに優しく毛布を掛けながら、アルドはどういう事かを説明した。
「あの戦いの最中、ハンスさんがキャロルさんに魔力を受け渡したでしょう? あれのお陰で、キャロルさんは辛うじて自分を完全に見失う事を免れたようです。恐らく、魔力を受け渡すのと同時にキャロルさんの記憶にガードを施していたのでしょう」
何と言う献身か。ハンスは己の身を犠牲にしてまで、キャロルを守り切ろうとしていたのだ。それは生半可な覚悟ではできない。恐ろしい程の愛が無ければ不可能である。
だがその代償は当然、大きい。それでも知らずにいる事は出来ず、響は恐る恐るハンスの現状を訊ねた。
「アルドさん。その……ハンス君は?」
響に
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