第十七話 死の島その九
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「死神でもないよ」
「裁きの代行者ですね」
「それでしかないよ。ただ」
「彼等をですね」
「死の島に連れていくことはするよ」
裁きの代行、それによってだというのだ。
「だからこそまずは彼等をああしたよ」
山岡達四人への裁きの代行のことだ。
「そして次は」
「理事長ですか」
「既に家はチェックしたよ。後は」
「地下室に連れて行きそのうえで」
「裁きの代行を下すよ」
今回もそうするというのだ。十字は二つの絵を見比べながら述べていく。
そしてその中でだ。こうも言うのだった。
「ベックリンだけれど」
「お好きですか?」
「僕は嫌いな絵は描かないよ」
模写であってもだ。それをしないというのだ。
「決してね」
「そうですね。そして嫌いな画家のものも」
「僕は描かない」
これは十字の考えだった。嗜好とも言っていい。
「絶対にね。このことは変わらないよ」
「そうですね。ではこの絵のままに」
「彼等を地獄に案内するよ」
裁きの代行者として。そうするというのだ。
「必ずね」
「では枢機卿は小舟を濃ぐ人でもありますね」
「そうなるだろうね。カロンではないけれど」
「はい。では」
「行くよ」
こう言ってだ。そのうえでだった。
彼はその日のうちにあの白い詰襟の制服で教会を出た。そのうえで彼の家に向かった。
由人は不機嫌な顔で己の屋敷の見事な造りと装飾のリビングにいた。そうしてだった。
妻、彼の素顔を知らない彼女にだ。表向き穏やかな声で尋ねた。
「ブランデーはあるかな」
「フランスのものですね」
「うん、それはあるかな」
「はい、ありますよ」
妻、気品のある顔立ちと身なりの彼女はすぐにだ。ブランデーの緑の瓶とグラスを持って来た。そのうえで夫に対して尋ねたのだった。
「お水ですか?それとも」
「氷でね」
「はい、氷割で飲まれますね」
「そうするよ。ところでね」
穏やかな、妻が知っている仮面を着けたままでだ。由人は妻にさらに言った。
観れば立派な和服を着ている。欧風、それもイギリスを思わせる造りのダークブラウンとブラウンの部屋に彼は和服でいる。そして言うのだった。
「チーズだけれど」
「おつまみはそれですね」
「そう。自分で冷蔵庫から出すよ」
だから気遣いは無用だというのだ。
「そうするからね」
「では私はもう」
「うん、寝るといいよ」
こう妻に言うのだった。仮面を着けたままで。
「それでね」
「はい、それでは」
こうした話をしてだった。妻がリビングを後にしたのを見届けてから。
由人は自分の足で冷蔵庫に向かいその中からチー
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