第二章
[8]前話
診てもらうとだ、医師に言われた。
「手術しますね」
「えっ、手術って」
「これは癌ではないですが」
「癌って」
「結構危ない腫瘍なので」
だからだというのだ。
「すぐに手術して除去しますね、入院の必要もあるので」
「入院もですか」
「ご両親に連絡して下さい」
「あの、手術とか病院って」
急に言われたのでだ、唯としては目を白黒させるばかりでこう言うしかなかった。
「一体」
「詳しいことは後で説明しますが」
「このできものそんなに危ないんですか」
「はい、ではご両親に連絡して下さい」
「それから入院ですか」
「その様にお願いします」
「それじゃあ」
唯はただ頷くしかなかった、それでだった。
家に連絡すると母が出て来て事情を話すと母も驚いた、だが医師の言うことなので頷くしかなくだった。
そしてだ、病院に駆けつけてきて娘の入院手続きを行った、夫つまり唯の父にも入院した。そうしてだった。
唯は入院することになり次の日の手術を行いそれは成功し数日安静にしてから退院することになったが。
唯は退院してから両親が医師から聞いた自分の病名を聞いても全く知らない病気だったが癌ではないのでこう言った。
「癌でないならいいけれど」
「いや、転移はしないがな」
「結構危ない病気だったのよ」
両親は娘にこう返した。
「早いうちに見付かって除去して」
「よかったのよ」
「お前はそれで助かったからな」
「本当によかったのよ」
「そうなの、只のできものじゃなくて」
ようやく事情が呑み込めて来てだ、唯は言った。
「命に関わる様な」
「そうだったんだ」
「実はね」
「今のうちに見付かってな」
「あんた助かったのよ」
「そうなのね、できものなんてね」
それこそとだ、唯は両親の話を聞いてほっとした顔になって延べた。
「よく出来て」
「何ともないとだな」
「思うわね」
「それでも中にはね」
「そうだ、こうしたこともあるからな」
「これからも気をつけてね」
「そうしていくわ」
真剣な顔でだ、唯は頷いた。
そして学校に戻って部活を再開してから後輩と部長に事情を話した、すると二人共助かってよかったと言ってくれた。そうしてだった。
唯はまた部活に励んだ、それから死ぬまで就職して結婚して家庭を持って母親それに祖母曾祖母となってもずっとできものには気をつけた、その時のことがいつも頭にあったので。
できものを侮るな 完
2023・2・16
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