第十六話 最後の審判その十
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「走ればいいのよ」
「成程ね。それじゃあね」
「ええ、そうしてね」
「走ることが基本だからね」
武道、空手でもそうだと言う猛だった。
「体力もつくし」
「足腰、一番大事なそこもしっかりして」
「忍耐力もつくしね」
「ほら。野球の話だけれど四〇〇勝した」
「金田正一さんだね」
「あの人も凄く走ったのよ」
雅は猛にこの信じられないまでの大記録を達成したピッチャーのことを話した。
「毎日毎日走ってね」
「それで四百勝できたんだ」
「そうよ。だからね」
「走る。それも効果的に」
「そうしてね。猛は元々走るの速いしかなりの距離もいけるから」
長距離向きだった。猛は。
その猛にだ。雅はさらに言うのだった。
「だからね」
「走り方を変えたらもっとよくなるんだね」
「勿論走るだけじゃないけれどね」
「肝心なのは空手の技だからね」
「そう。けれどね」
それでもだ。走るのがよければだというのだ。
「体力もつくし。身体の動きもよくなるし」
「走るのはいいことだよね」
「そうよ。だからどんどん走ってね」
「わかったよ。あとはサーキットトレーニングもしてね」
「あれもいいのよ」
トレーニングにだ。いいというのだ。
「だからね。頑張ってね」
「うん、そっちもね」
二人で笑顔で話している。そんな二人をだ。
十字は表情のないその顔で見ていた。そして二人が見えなくなると。
彼はこの日は部活に出た。その部室で和典に言われた。
「あれ、今日は来られたんだ」
「今日はね」
「やっぱり部活っていいよね」
「そうだね。心が落ち着くね」
十字もだ。和典のその言葉に頷いて返す。
「絵を描いているとね。それに」
「それに?」
「部活の雰囲気自体がいいから」
部活のことも言うのだった。この美術部自体の。
「余計にいいよ」
「雰囲気ね」
「そう。雰囲気がいいから」
だから余計にいいというのだ。
「その場所の雰囲気は大事だからね」
「そうだよね。絵を描くことが好きだとしてもね」
「部活の雰囲気が悪いと何にもならないんだよ」
「確かにね。そして雰囲気を作るのは」
「人間だよね」
「そう。人間だよ」
他ならぬだ。その部活を構成する者達だというのだ。
「そちらが大事だよ」
「その通りだよね。僕もそう思うよ」
「どんな立派なことをする場所だとしても人間が悪ければ」
「立派なことはできないよね」
「ヤクザ者ばかりだとどうなるかな」
「暴力団になるよね」
「そう。立派なことはできないよ」
ましてや絵なぞ描くこともできないというのだ。そうした者達がいる
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