第八十五話 夕食もその十三
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「ださく」
「だからださいおじさんが美少女を好きになったらどうなるか」
「分不相応に」
「そうしたことを書いた作品なのよ」
「そうだったの」
「それで狸にはモデルがいたのよ」
咲はこのことも話した。
「どうもね」
「モデル誰なの?」
「田中英光さんって人で」
「あれっ、何処かで聞いたわね」
同級生はその話を聞いて述べた。
「そのお名前」
「太宰さんの弟子筋にあたる小説家さんよ」
咲は今度はその人物の説明を行った。
「オリンピックの選手だったこともあるのよ」
「スポーツマンでもあったの」
「それで代表作はオリンポスの果実で」
この作品でというのだ。
「そのオリンピックに出た時のことをね」
「書いたの」
「そうした作品で」
それでというのだ。
「大柄で色黒だったそうなの」
「それで狸に似てたの」
「写真観たらあまりそうは思えないけれどね」
何処か人懐っこい感じの顔立ちであった、美男子としても有名であった太宰とは違うことは事実であろう。
「それでもモデルだってね」
「言われてるの」
「そうなのよ」
「その狸にモデルがいたなんてね」
同級生はしみじみとして言った。
「思わなかったわ」
「そうなの」
「ええ、けれどださいおじさんが可愛い女の子好きになったら駄目なの」
「それね、歳の差なんてね」
「気にしない人はね」
「気にしないしださくても」
そうであってもというのだ。
「根がね」
「よかったらね」
「それでいいわよね」
「そうなのに」
それでもというのだ。
「そこまでするって」
「おかしいわね」
「流石にね」
「やり過ぎってレベル超越してるわよ」
「最早ね」
それこそというのだ。
「殺人だしね」
「人間の世界だと」
「もうね」
「そうしたお話で」
「こんなこと許したら」
「駄目だしね」
「いや、あの兎はね」
兎角という口調での言葉だった。
「原典の同和でもやり過ぎだけれど」
「太宰の作品だと」
「はっきり言って犯罪だから」
それ以外の何物でもないというのだ。
「もうね」
「法律があったらね」
「殺人だからね」
「それも何度も騙して嬲り殺した」
「気に入らないってだけでね」
「狸がストーカーだとしても」
「そこまでじゃなかったしね」
太宰が書いた狸はだ。
「流石に」
「そう考えたら」
「やり過ぎどころかね」
「立派な殺人ね」
「自分を好きだっていう気持ちを悪用してもいるし」
事実この狸は明らかに恋は盲目という状況であった、中年男の不相応な恋心と言えばそれまでだが彼等は明らかにそうなっていた。
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