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第六話 封印その十二

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「もうね」
「これでだな」
「安心よ、じゃあね」
「行くか、学校に」
「そうしましょう」 
 小鳥は神威に明るい笑顔で応えた、そのうえで一緒に登校するがそうしはじめてすぐに左手にだった。
 大きな枝が広く傘の様に拡がっている木を見てだった、神威は言った。
「この木だったな」
「二人でよく遊んだわね」
「そうだったな」
「私が木に登って降りられない猫ちゃんを助けて」
「登ってな」
「今度は私が降りられなくなって」
「俺が行ったな」
 小鳥に顔を向けて話した。
「助けに」
「けれど私が落ちそうになって」
「俺が掴んだな」
「私の手をね、そしてね」
「俺も落ちそうになったがな」
「神威ちゃんずっと持っていてくれたわね」
「俺が手を離すか落ちるとな」
 そうした時はとだ、神威は小鳥に話した。
「小鳥が危なかったからな」
「それでだったわね」
「ああ、絶対にだ」
 神威は強い声で答えた。
「離すものかって思ってな」
「それでだったわね」
「持っていた」
 ずっと、というのだ。
「封真やおじさんが来るまでな」
「私達の帰りが遅かったから」
「心配して探しに来てな」
「見付けて助けてくれるまで持っていてくれたわね」
「当然のことをしただけだ」 
 これが神威の返事だった。
「あの時はな」
「そう言ってくれるの」
「しかも小鳥は子猫も持っていた」
 助けたその猫もというのだ。
「だから尚更だった」
「神威ちゃんらしいね」
「俺らしいか」
「優しくてね」
 神威に笑顔を向けて話した。
「いざという時頼りになって」
「それが俺か」
「うん、本当にね」
「そうなのか、ところでだ」 
 神威は小鳥の言葉を聞きながら言った。
「あの時助けた猫はどうしているんだ」
「能登さんのお家の猫ちゃんだったの」
「神社のご近所のか」
「それで今も元気よ」
「そうか、元気なんだな」
「もうお婆ちゃんになってるけど」
 それでもというのだ。
「元気よ」
「それは何よりだな」
「猫ちゃんのことも気遣ってくれてるのね」
「助かった命だしな、それに」
「それに?」
「無駄に死んでいい命なんてない」
 小鳥を見て言った。
「だからな」
「猫ちゃんのこと言ったのね」
「あの時はそこまで考えていなかったが」
「無駄に死んでいい命はないって」
「今はそう考えている、小鳥もだ」
 今も彼女を見ている、そのうえでの言葉だ。
「同じだ」
「私もなの」
「そうだ、無駄に死ぬことなんてない、いや」
 ここで自分の言葉を訂正した。
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