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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
GX編
146話:奇跡は望まず掴むもの
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 キャロルにより増幅されたフォニックゲインを用いて、奏達のシンフォギアはエクスドライブを発動。それと同時に、颯人も己の中の全ての魔力を力に変換し、オールドラゴンへと至った。

 曇天が晴れ、差し込む光に照らされた7人の戦姫と3人の魔法使い。

 それらを前にして、暫し呆然としていたキャロルだが不敵な笑みを浮かべたのも唐突だった。

「フン……奇跡を身に纏ったくらいで俺をどうにかできるつもりか?」

 キャロルは現時点での最高戦力を前に、尚余裕を崩さなかった。確かに奏達はエクスドライブを発動できた。これが通常の戦闘であれば最早勝ちは揺るがない。
 だがこのエクスドライブに至る為のフォニックゲインを齎したのは他ならぬキャロルなのだ。当然、彼女もそれに相当する、否、それを超えるほどの力を有している筈。

 この場において双方の戦力はほぼ互角…………ではなかった。

「違うな、コイツは奇跡でも何でもねぇ」
「何だと?」

 そう、この場でキャロルに無くて奏達にあるもの。それは魔法使いの有無であった。キャロルに与していた魔法使いのハンスは既に居らず、一応は手を貸していたジェネシスも手を引いた。彼女はたった1人。たった1人で、装者と魔法使いの合計10人を相手にしなければならないのである。

「コイツは……希望だ」
「希望……」
「そうさ! アタシ達と、颯人達で作り上げた希望だ! お前を止めて、世界を救う為のな!」

 颯人に続き、奏がこの力を希望と呼んだ。奇跡とは神により齎されたチャンスであり救済。対して希望とは、自らの力で望み手に入れた勝利への布石。颯人達は、決して諦める事無くキャロルとの戦いの勝利と救済に王手を掛けようとしていたのだ。

 だが、キャロルはそれを激昂で一蹴した。

「同じ事だッ!? 奇跡も希望も、皆同じだッ!? あの日、俺から父を奪った奴らも、疫病から村を救った父の献身を資格無き奇跡と断じ、刎頸の煤とする事で勝手に自分達の希望としたのだ…………!?」

「それだけじゃない。ハンスもまた、そうした愚かな連中が身勝手に希望を掴むために、家族を奪われた…………!?」

 響達はここで初めて、キャロルの過去に何があったのかを知った。何故彼女が頑なに奇跡を憎み、世界を破壊しようとするのかを、ここで漸く理解したのだ。

「魔女狩り……いや、異端狩りって奴か」

「万象に存在する摂理と術理……それらを隠す覆いを外し、チフォージュ・シャトーに記す事が俺の使命。そしてハンスの願い。即ち万象黙示録の完成だった…………だったのに…………!?」

 その肝心のチフォージュ・シャトーは既に機能を完全に停止された。もう万象黙示録の完成は叶わない。それどころかハンスも居なくなり、キャロルは正真正銘一人ぼっちだ
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