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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
第百三十三話 司馬尉、陣を語るのことその八

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「この世界に来てのう」
「善と悪は言い切るのがまことに難しい」
 鎮も珍しく深い言葉を出した。
「中々のう。わかりにくいものじゃ」
「善って何なのか。悪って何なのか」
 包も言う。そしてだった。
 深い顔になり考えてだった。人自体についても考えてだ。そうしてそのうえで翁や鎮といった人生の先輩達も見てだ。そしてこんなことを言ったのである。
「ずっと考えてもわからないものなのかな」
「そうなのじゃ」
 翁は包にも話す。
「人は常に善と悪を内在しておるがじゃ」
「その善と悪が非常にわかりにくいんだね」
「一概に言えぬものじゃ」
 どうしてもだ。そうなるというのだ。
「しかしそれでもじゃ」
「それでもかいな」
「何かがあるんですね」
「人は。あ奴も気付いたことじゃが」
 嘉神だ。彼の弟子であり同志のだ。
「それでも人はよいものじゃ」
「そやな。悪いことだってするけどな」
「それでもですね」
「うむ。人はよいものじゃ」
 こうだ。翁はケンスウとアテナに話した。
「不安定で弱い存在じゃがな」
「そうじゃな。確かに愚かじゃ」
 このことは鎮も言う。
「しかしそれでもじゃ」
「愚かなだけではない」
「賢明なものもあるからのう」
「そうした人というものを一方的に言えるのか」
「言えぬな」
「そのことがわかってきたのじゃよ」
 長く生きてきてだ。それでようやくだというのだ。
「人は善でもあり悪でもあるのじゃよ」
「言うならばあれなの?」
 包がここでまた言う。
「中立なのかな、人って」
「そもそも生まれた時は全くの白紙やで」
 ケンスウは赤子の状態をこう指摘した。
「それで善か悪かってな」
「ちょっとないのね」
「俺もそう思えてきたわ」
 その考えに至ったというのだ。
「そんでそこから色々勉強するんやからな」
「いいことも悪いことも」
「それで何で一方的に悪って言えるかや」
 オロチ達の様にだ。決め付けられるかというのだ。
「オロチの奴等は一方的に自分達の目だけで決めつけてるだけやな」
「そうなるわね」
 アテナもケンスウのその言葉に頷く。こうした話をしてだった。
 そしてだ。また言うアテナだった。
「だからこそあの人達は間違ってるのね」
「そやなあ。そこがやな」
「そうね。だから」
「絶対に止めなあかん」
 ケンスウにしては珍しい断言だった。そうしてだった。
 あらためてだ。彼は言った。
「ほな、やるで」
「ええ、頑張らないとね」 
 アテナも応える。敵に向かいながらだ。彼等は決意をあらたにするのだった。


第百三十三話   完


                                         2011・12・19
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