第百三十二話 一同、北に向かうのことその四
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「常世を封じる」
「そうされるんですね。嘉神さんは」
「そしてだ」
嘉神はさらに言う。
「あの娘を犠牲にはしない」
「ああ、あの娘な」
ジャックがその話に応えて言う。
「月ちゃんな」
「誰かが犠牲になって何かが守られる」
嘉神の言葉はだ。彼の今の考えをそのまま述べていた。彼自身をだ。
「そうせずに済むのならだ」
「それに越したことはないな」
「あの男。今は黄龍というが」
かつての仲間のこともだ。嘉神は話す。
「あの男もその為に来たのだ」
「ですがそれは」
李がここで言う。
「あの方が代わりに」
「そうだな。そうなるな」
「それは親だからですか」
「あの男は一度私が殺した」
嘉神の過去だ。人を否定したその時のだ。
「しかし甦ってきた」
「そしてそのうえで」
「月さんを」
「親はそういうものなのか」
嘉神もだ。深く思案する顔になっていた。
そうしてだった。彼は仲間達に言うのであった。
「だとすればこれは非常に強いものだ」
「親の力はですか」
「つまり愛情ってやつだな」
李とジャックがその嘉神に応えて述べる。
「それ故に月さんの為に再び甦り」
「そうして自分が犠牲になるつもりってのか」
「そうだろう。だからこそだ」
嘉神は李とジャックの言葉に応えてまた言う。
「赤壁に姿を現したのだ」
「そういえばです」
ここで言ったのは?義だった。ふと気付いた様な顔になってだ。
「月さんは常世を封印された時に消えられたそうですが」
「その通りだ」
「ですが何故今ああしてこの世界におられるのでしょうか」
「封印が解かれた」
刹那のだ。それがだというのだ。
「そしてそれと共にだ」
「月さんもですか」
「その通りだ。それによりだ」
まさにだ。刹那の復活と月の復活は表裏一体だというのだ。
その話を聞いてだ。?義もだ。
眉を鋭くさせてだ。言ったのである。
「巫女の全てとひきかえに常世を封じ」
「そしてそれが解放されればだ」
「巫女もまた甦るのですか」
「しかし封じる為にはだ」
堂々巡りの様にだ。話が為されていく。
そしてその話を聞いてだった。?義達もわかったのである。
「その月さんの身代わりにですか」
「あの方はなられるのですか」
「そして常世を封じるってか」
「いや、封じるだけではあるまい」
同じ四霊だった者としてだ。わかることだった。
「常世は消せぬがだ」
「それでもですか」
「封じる以上のことをするっていうのかよ」
「そうだ。刹那を。その常世の門と鍵自体をだ」
「消し去る」
「そうするってんだな」
「黄龍はそう考えている」
根本からだ。全てを消し去るつもりだというのだ。他ならぬ刹那を消し去ることによって。
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