第2部
ダーマ
賢者☆誕生
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の客層など、数えればきりがないくらい私たちは会話を楽しんだ。そして気が付けば、ユウリが約束していたお昼をとっくに回っていたのだった。
「シーラ!! 大変、早く戻らないとユウリに怒られちゃう!!」
アルヴィスの家のソファに座っていた私は、跳ねるように立ち上がる。
「あら、ユウリくんも来てるの? 知らなかったわ」
なぜならユウリの話題すら出ないくらい、自分たちの話で盛り上がっていたからである。
「きっと私たちにひやかされるのが嫌で逃げたんでしょうね」
「ひやかされる? ユウリが?」
何のことかと尋ねただけだったのだが、なぜか三人とも無言で私の方を見返してきた。
「……もしかして二人とも、気づいてる?」
真剣な表情でシーラが二人の方に視線を投げかける。そんな彼女の視線を受け取った二人は、静かに頷いた。
「いや、あんなのバレバレでしょ。気づかないのは本人くらいなものよ」
「ダメよビビ。こういうのは温かい目で見守るのがマナーなんだから、下手なこと言わないの」
ひそひそと、声を落として話し合う三人。……なんだか私には関係のない話をしている気がする。三人にしかわからないやり取りに、私は口を尖らせた。
「あー、えーと、違うのミオちん、別にミオちんを仲間外れにしてるわけじゃないの。ただ、なんというか……」
それきり、言葉に詰まるシーラ。そんなに言いにくいことなのだろうか?
バァン!!!
すると、アルヴィスの店の扉が勢いよく開かれる音が響いた。と同時に、乱暴に床を踏みしめる足音が近づいてくる。
「ミオ、シーラ!! お前らよくもオレをほったらかして行きやがったな!?」
怒りの形相でやってきたのは、ナギだった。
そう言えば、ビビアンの寝間着姿に鼻血を出して倒れていたまま、すっかり忘れていた。
「えーと、どちら様ですか?」
ぽつりとそうナギに尋ねたのは、彼の想い人であるビビアンである。
「び、ビビアンちゃん!?」
好きだった人に気づかれなかったどころか、名前すら憶えてもらえなかったショックで、ナギの身体は石のように動かなくなった。
「ビビアン!! さすがにそれは言っちゃダメな奴!!」
私はたまらず彼女に注意するが、すでにナギは再起不能に陥っている。
「そんなこと言ったって……。えーと、なんかごめん。ミオたちの仲間なの?」
するとシーラが、満面の笑みでビビアンの視界を覆った。
「大丈夫!! いつものことだから、気にしないで!! ていうか気にも留めないでいいから!!」
そう言って、シーラはナギの首根っこを掴むと、ずるずると彼を引きずりながら店の方に向かった。
「それじゃあ、ビビ、アル!! 元気でね!!」
「え、あ、うん! シーラもね!!」
戸惑いながらも、ビビアンはシーラに別れの挨拶を交わす。
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