第127話『出し物』
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晴登は部室のドアを開いて、
「こんにちは──」
「そーれ!!」
挨拶をするのと同時に聞こえたのは掛け声。続いて、何十枚ものカードが巻き上がる光景を目にする。
そしてそのままパラパラと地面に落ちるカード。何が起こったのかと呆気に取られていると、その中心にいた少女が最後に降ってきた1枚のカードを掴む。
「ずばり、ハートの3ですね!」
「うわ〜当てられた! すげぇ!」
「マジでどうやってんの?!」
「次俺! 俺の番!」
「おい、俺だって!」
ドヤ顔でそう宣言する天野に対して、2年生達は驚きを露わにしている。そんな彼らとは異なる驚きを抱えて入口で固まっている晴登達に北上は気づくと、
「お、部長が来たぞ。うーっす」
「こ、こんにちは……」
部長ではあるが一応後輩という身なので、挨拶は今までと変化はない。
それはそれとして、この状況には口を挟まざるを得なかった。
「な、何してるんですか?」
「見てわかるだろ。天野にマジック披露してもらってたんだ。引いたカード当てるってやつ」
「ふふん、うちはこのマジックには自信がありますからね。部長さんにもやってあげますよ」
「その前に散らばったカード片付けて……」
引いたカードを当てるという、シンプルゆえに奥が深いマジック。天野はそれに加えて、カードを空中にばら撒く演出付きだという。確かに凄いとは思うが、このマジックを披露する度に床にカードが散乱するのはどうかと思う。
「はいはい、わかっておりますとも──あーーー!!!」
「うわっ!?」
そんなことはもう言われ慣れていると言わんばかりに、そそくさとカードを集め始めた天野だったが、ふとその視界にとある人物が映って、大きな声を上げた。
「あなたがゆづちゃんですね!!」
「ゆ、ゆづちゃん? それってボクのこと?」
「それ以外に誰がいるんですか! 結月ちゃんだからゆづちゃん。ダメでしたか?!」
「ダメじゃないけど……」
トランプの片付けなんかそっちのけで、天野は結月の手を握って一方的な握手を交わす。初対面にも拘らず、早速あだ名を付けるという勢いのある距離の詰め方はさすがだ。
……ゆづちゃん。良い響きだな。今度呼んでみようか。
「それなら良かったです! それにしても、優ちゃんの言ってた通り、凄く可愛いですね! まるでお人形さんみたいです!」
「ど、どうも……」
珍しい物を見るかのようにジロジロと結月のことを見る天野。実際、初対面なら絶対に驚く容姿だとは思う。異世界という前提があったにもかかわらず、晴登も驚いたのだから。
「同性ながら惚れ惚れとしてしまう容姿です。綺麗な銀髪
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