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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
三界に家無し その2
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「天のゼオライマーのパイロット、木原マサキとは、俺の事だ」
と、握手に応じるべく、寒さでかじかんだ右手を差し出した。


 男は、驚く様子も無く、帝国陸軍の茶褐色の勤務服を着たマサキの面を、(にら)むなり、 
「冥府から来たBETA狩りの男。支那で情報省に拾われた科学者とは、君の事か。
流れ者とは親しくしない主義でね」
その言葉を聞いた、脇に居る女秘書も、面白がって、
「戦術機の設計技師というから、もっとお年寄りと思ったわ。ニューヨークに何しに来たの」
その態度に、マサキは思わず、
「俺を呼んだのは、フェイアチルド社の方だ」と、失笑を漏らした。
「五摂家の一つ、斎御司(さいおんじ)家、嫡子(ちゃくし)。名は経盛(つねもり)だ。
次期当主という立場もある。悪く思わないでくれ」
右手で帽子を脱ぐなり、胸元に抱えて、
「それとも、君は各国政府首脳との直通電話(ホットライン)を持っているのかね。
それなら話は聞くのだが」
「西側はないが、東側ならある。支那と東ドイツは、俺の一声ですぐさ」

 途端に、斎御司の顔色が曇った。
 この冷戦時代に、その一言は不味かった。
東側と直通電話を持つと言う事は、容共人士とみられても、仕方のない行動だった。
マサキ本人は、ソ連への憎悪に燃え、反共の志操を持ち、自由社会の美風を楽しむ人間である。
 野望の為に、赤色支那や東欧の社会主義国を利用し、ソ連を弱体化させる。
世界征服の手段の為には、あえて共産国と手を結ぶ方便を使ったのだ。
だが、様々な事情を知らない、斎御司の目には、如何(いかが)わしい人物に(うつ)った。

斎御司は、不敵の笑みを浮かべ、
「いよいよ、喰うに困って、東側の御用聞きを始めようっていうのかい」
脇に居る女秘書も、笑い声に連れられて、
「キャハハハハハ」と、白い歯を見せるも、途中でバツの悪そうに口を右手で覆った。
斎御司は、歩み寄って、マサキの面前に顔を近づけると、
「消えてくれ」
そういって、そっけなく右掌をマサキに見せつけ、
「断っておくが、同じ日本人だなんて露ほどは思わないでくれよ。
日本にいた所で、君が僕に対して簡単に口をきける立場か」
 紫煙を燻らせながら佇んでいたマサキの前に、脇に居た女がしゃしゃり出てきて、
「さあ、早く消えて頂戴。若様はお忙しいのよっ!」
と右手を腰に当てて、左手で、しっしと追い払った。

 護衛についていた日系人警官が思わず、
「どうしたんだ、木原。話がさっぱり分からないのだが」
と、困惑する姿を横目に、マサキは、内心あきらめに似た感情をいだきながら、
「散々、この俺に頭を下げて、ゼオライマーを使い倒して、今更、関係ないか。
アハハハ」と、乾いた笑いを浮かべ、
「良かろう。斎御司よ、今の
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