第四章
[8]前話
「この話は」
「鬼ですか」
「そうでごわす、都は鬼の話も多いでありもっそ」
「そうでごわすな、確かに」
大久保もそれはと応えた。
「都は鬼の話も多いでごわす」
「それで、でごわす」
「その話をするでごわすな」
「そうするでごわす」
こう大久保に話した。
「坂本さあに」
「わかりもっそ、では」
「坂本さあもそれでいいでごわすな」
「何でも歓迎ぜよ」
これが龍馬の返事だった。
「話して欲しいぜよ」
「ならでごわす」
「それでどんな鬼じゃ」
「羅生門の鬼でごわす」
西郷は微笑んで答えた。
「坂本さあも知ってるかも知れんでごわすが」
「ああ、あの鬼か」
龍馬はその話を聞いてこう返した。
「渡辺の綱さんが切った」
「その話でありもっそ」
まさにとだ、西郷も答えた。
「坂本さあが知っていて聞く気がないなら別の話にしもっそ」
「いや、それで頼むぜよ」
龍馬が西郷に笑って返した。
「わしはその話が好きでのう」
「聞きたいでごわすか」
「西郷さんの喋りは面白いきに」
このこともあってというのだ。
「西郷さんの喋りでな」
「羅生門の鬼の話を聞きたいでごわすか」
「そうじゃ、ではな」
「今からお話しもっそ」
「頼むぜよ」
「都はただ天下のことを為す場ではありませぬ」
大久保は西郷の横で言ってきた。
「長い歴史があり」
「その歴史の中でじゃな」
「怪異の話も多いので」
「その話を知ってのう」
「時として話すこともです」
これからする様にというのだ。
「よいかと。では」
「これからな」
「吉之助さあのお話を聞きましょう」
「そうするぜよ」
「でははじめるでごわすよ」
西郷は微笑んで話した、そしてだった。
龍馬は大久保と共に西郷が話す羅生門の鬼の話を聞いた、薩摩の言葉でのそれは実に面白く龍馬も楽しめた、幕末の志士達のほんの一時の話であるが案外こうした話は知られていない、しかし彼等も人であり時にはこうしたこともあったのである。
志士の怪談 完
2023・1・30
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