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百の目がある実
第三章

[8]前話
「この実があるところだけれど」
「ああ、何処なんだ?」
「何処にあるの?」
「こっちなの」
 ピニャンがお父さんとお母さんを案内したところはです。
 村の外れの誰も行かない様な場所でした、そこにです。
 その実をつけた見たこともない植物がありました、ピーニャはその実を指し示しながら言うのでした。
「前にたまたまここを通って」
「そうしてか」
「そうしてなの」
「これを見付けてね」
 その植物を指差して言います。
「もいだら痛いから」
「確かにそうした風だな」
「物騒な感じの実よね」
「皮をナイフで切ったら」
 そうしたらというのです。
「黄色い中身が出たから明かりにしたの」
「そうなんだな」
「ここにあるものだったのね」
「うん、いつも暗くなった時の灯りにして」
 そうしてというのです。
「遊んでるの」
「そうか、しかしな」
 ここでお父さんは言いました。
「ひょっとしたらな」
「どうしたの?」
「いや、この実の中身は食べられないか」
 その黄色い中身を見て言うのでした。
「若しかして」
「毒ないかしら」
「それなら皮を剥いてまずは猿達にあげてみよう」
「それで猿に何もなかったらなのね」
「わし等も食べよう」
 こうお話してでした。
 実の皮を完全に剥いて芯があったのでそれも取ってでした。
 そのうえで試しに森の猿達の前に置きますと。
 猿達はとても美味しそうに食べてその後何もありませんでした、それでお父さんとお母さんはピニャンと一緒にその実を食べるとでした。
「物凄く酸っぱいが」
「それ以上に甘くてね」
「凄く美味しいわ」
「そうだな、じゃあこれからは畑に植えてな」
「そうしてなのね」
「実を取っていくのね」
「そうしよう」
 こうしてでした、この実は畑で作られる様になって皆が食べる様になりました。この実は最初は名前がありませんでしたが。
 ピニャンが見付けたのでそのまま彼女の名前を取ってピニャンと名付けられました、そして今でもフィリピンの人達はこの実、今日本等でパイナップルと呼ばれているものを百の目が付いている様だとも言ってです。
 ピニャンからピーニャと呼ぶ様になりました、フィリピンに伝わるお話です。


百の目がある実   完


                     2022・9・11
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