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博物館の闇
第二章

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「覚悟して中に入って間違っても迂闊にものに触れない」
「そのこともですね」
「気をつけるんだ、いいね」
「わかりました」
 スウィストはコネリーの只ならぬ様子に真剣な顔で頷いてだった。
 そうして彼にその特別な部屋に案内された、すると。
 まずあるものが目に入った、それは布であったが。
 人の顔の形のシミがあった、それは何かというと。
「これは」
「聖骸衣だよ」
「あの、それは」
「伝説にあるね」
「聖書の」
「キリストのことは知っているね」
「はい」
 この国はキリスト教の国である、それでスウィストも生まれた時に洗礼を受けている。そして幼い頃から教えを聞いている。
 それでだ、コネリーにもこう答えた。
「主のことは」
「そうだね、それならね」
「聖骸衣のことも」
「そうだね、そしてね」
「これがですか」
「正真正銘のだよ」
 まさにというのだ。
「キリストのなんだよ」
「トリノのものはですね」
「あれはわかるね」
「絶対に違います」
 スウィストははっきりとした声で答えた。
「本物では」
「それはどうしてかな」
「顔が違います」
 スウィストはまたしてもはっきりとした声で答えた。
「主の顔とは」
「そうだね、トリノのあれはラテン系の顔だね」
「主はラテン系か」
 スウィストはこのことから言った。
「それはです」
「違うからね」
「はい、主は当時の中東におられ」
「そこではね」
「ローマ帝国の支配下にあろうとも」
 当時そうであったがというのだ。
「民族的にはです」
「ラテン系ではないよ」
「古来より様々な民族が行き来し」
「混血もあったにしても」
 それでもというのだ。
「やはりです」
「ラテン系の顔ではないね」
「あの髭も」
 キリストの代名詞になっている濃く長い縮れた髭もというのだ。
「ない筈です」
「そうだね」
「かつて主は髭のない美男子として描かれていました」
「古来はね」
「それが時代によって変わり」
「今に至るね」
「はい」
 まさにとだ、スウィストは答えた。
「ラテン系であの髭は有り得ないです」
「だからトリノのものはね」
「本物ではありません、ですが」
 スウィストはその聖骸衣を見つつ話した。
「この主のお顔はアジア系に近くお髭もありますが」
「短いね」
「ヘブライ系の人は髭を生やしますが」
「そうした決まりだからね」
「はい、ですから」
 そうしたことから考えてというのだ。
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