第三章
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定年で教師の座を退いて時間が出来たので尚更だった。
博物誌の作成をしていった、スコットが定年を迎えて二十年経ち。
遂に博物誌が完成した、その話を聞いた今もスコットがいた博物館で働いているバッキーは年齢を重ねた顔で言った。
「遂にですか」
「完成したよ」
スコットは定年してからも交流のある彼にスマートフォンで話した。
「博物誌がね」
「おめでとうございます」
「うん、子供や孫曾孫達にもお祝いしてもらうことがね」
このことがというのだ。
「決まったよ」
「皆そうしてくれるんですね」
「友人達ね、それで君もね」
バッキーもというのだ。
「そのパーティーにどうかな」
「お邪魔していいですか」
「君さえよかったらね、どうかな」
「是非」
これがバッキーの返事だった。
「そうさせて下さい」
「それではね」
「一緒にお祝いしましょう」
こう答えてだった。
バッキーはお祝いのパーティーに参加することを嬉しく思いつつ決めた、そうしてパーティーの場で。
その博物誌を見せてもらってだ、こう言った。
「素晴らしいです、これならです」
「これなら?」
「学術的にも立派ですし」
だからだとだ、スコットに話した。
「発表してもです」
「いいんだ」
「同人誌の様なものでなく」
「公にだね」
「発表しましても」
それでもというのだ。
「いいです」
「そうなんだ」
「そうされますか?」
「そこまで考えてなかったよ」
スコットはバッキーに少し照れ臭そうに述べた。
「けれどね」
「それでもですか」
「君がそう言ってくれるなら」
もう古い友人の一人になっているとまで言っていい彼がだ。
「そうしようかな」
「そうされますか」
「うん、それでだけれど」
スコットはバッキーにさらに話した。
「原本は妻とも話したんだがね」
「はい、それで決めました」
夫と同じくすっかり髪の毛が白くなり皺だらけの顔になっている彼女も言ってきた。
「主人が務めていた博物館にです」
「こちらにですか」
「預けたいと」
「そうしていいですか」
「印刷したものはこちらに残すから」
スコットはまたバッキーに話した。
「だからね」
「原本はですか」
「博物館に預けるよ、やっぱりずっとね」
「六十年の間ですね」
「時間をかけて」
そうしてというのだ。
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