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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
37:終わる為の出会い
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 ――ボクは、元々は中層ゾーンの平凡なプレイヤーだった。

 このデスゲームが始まり、怯えながら命がけの日々を過ごす毎日ではあったが……それでもレベル1のまま《はじまりの街》に居留まる事を良しとしなかった、たくさんのプレイヤーの内の一人だった。
 《攻略組》と呼ばれる、トッププレイヤー達には遠く及ばないものの……第一層に未だ留まり続ける約六千人ものプレイヤー達とも違う、全プレイヤー中で平均的な強さの場所に位置する、そんな中途半端なレベルの数多くの戦士達の一人だった。
 命の危険は絶対に冒さない。けれど、そこそこの経験値とコルを稼げ、かつ日々の暇つぶしになる平和なクエストをこなす、そんな能天気で気ままなグループの一員だった。

 それらのクエストをこなしていく片手間や休憩中に、動物好きであったボクは単身、鼻歌交じりに森の中や獣道に足をよく運んでいた。
 なにをするのかというと……まず『耳を使って』モンスターを見つけ出し、草むらで身を隠しながら……そのモンスターが気に入れば、その傍に木の実などのエサを投げ込んでやっているのだ。
 すると彼らは、一様にそれに一瞬びっくりするものの、辺りを警戒しながらもそろそろとエサに近付き……そして嬉しそうな顔でパクッと食べてくれるのだ。
 相手はあくまでモンスターなので、姿を見せてしまえばたちまち驚いて逃げてしまうか、最悪牙を剥いて襲ってくる。しかし、こうしてこっそりお情けを与えてあげれば、仮想世界でも彼らはしっかり応えてくれるのだ。
 ボクにとっては、それが、堪らなく嬉しかった。
 これが……ボクのこの世界で唯一の趣味であり、唯一心が和らぐ一瞬だった。

 この世界で生きていくうえで、これだけでボクは満足だった。

 そりゃ、ボクもこの世界に幽閉されて、辛い思いもさんざん味わってきた。
 ……もう現実世界には帰れない。つまり、もう大好きなお母さんに会えないかもしれない……そう思い知らされて一日中、宿のベッドの中でずっと泣きじゃくったことも何度もあった。……既に他界している、今でも大好きなお父さんに、こんな形で会いにいくのかと思うと……申し訳なくて悲しくて仕方がなかった。
 ……けれど、こんな世界でもボクはボクとして、今を生きていけている。
 そう実感できているからこそ、ボクはこのMMORPGでの1プレイヤーとしていられていたのだ。


 …………あの時が、来るまでは。


     ◆


 ――……そもそもボクがこのゲームに興味を持ったのは、大多数の人の動機であろう完璧な仮想世界での『冒険』や『戦闘』ではない。

 ゲーム自体は携帯端末の暇つぶし程度のそれしかしたことなかったボクが……このSAOの世界に飛び込んだ理由はただ一つ。

 ――この世界の、不可思議な動物
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