暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
37:終わる為の出会い
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
今ボクが滑り落ちている速度然り、未だ奥底に辿り付けないこの穴の深さ然りだった。
 ビョウビョウと勢いのある風がボクの髪を激しくなびかせ始めて、たっぷり20秒は経ったかという頃に、ようやく奥底が見え始めた。
 ボクは斧の柄を強く握り……着地に備え両足にも力を込める。その両足に地面がいよいよ切迫し――

「……だいじょ――あだっ!?」

 カッコよく救援に駆けつけるつもりが、予想以上の滑り落ちる勢いに、穴底に付いた途端両足でのストップが効かず、あろうことかビタンと前のめりに思い切り転んでしまった。か、カッコ悪い……。
 しかし、緊迫する今はそうも言っていられない。その落胆も一瞬で済ませ、目の前で繰り広げられているであろう激戦に備え、すぐさま立ち上がりガシャリと大斧を構える。
 ……しかし、

「…………え?」

 予想していなかった光景が、ボクの目の前に広がっていた。
 思いの外狭い、直径およそ3メートル・畳にしておよそ4畳半ほどの、不定形の土に囲まれた小さな地下空間。
 その地面に自生している、淡く発光している不思議な植物の影響で仄かに明るい、この空間には……

 ……なにもなかった。

 ボクの目の前には、モンスターの大群も、助けを求めるプレイヤーも、ましてやトレジャーボックスの山すら無かった。あるのは狭い空間と土に岩、淡い光とただの僅かな植物オブジェクト。それだけだ。
 ……だとすると、一体誰がこのトラップに――

「…………?」

 その時だった。
 ボクは気づいた。
 穴の出口に立つボクの視界の死角。真左の足元一メートル先に、僅かな気配。
 ――すぐ足元に、なにか、居る。
 反射的にその場所に首を捻り、目を動かし……

「―――――」

 視界が、純白に染まったかと思った。

 そう思えたほどに、白く、穢れない小さな存在が、そこにあった。
 その白さを神秘的なものと裏付ける、仄かに青く煌く毛。そこにアクセントのように燦々と灯る紅い目。
 そんな姿を有する、一匹の、仔馬。

「キミは――」


 ――――こうして、ボクは《ミストユニコーン》と出会った。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ