37:終わる為の出会い
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今ボクが滑り落ちている速度然り、未だ奥底に辿り付けないこの穴の深さ然りだった。
ビョウビョウと勢いのある風がボクの髪を激しくなびかせ始めて、たっぷり20秒は経ったかという頃に、ようやく奥底が見え始めた。
ボクは斧の柄を強く握り……着地に備え両足にも力を込める。その両足に地面がいよいよ切迫し――
「……だいじょ――あだっ!?」
カッコよく救援に駆けつけるつもりが、予想以上の滑り落ちる勢いに、穴底に付いた途端両足でのストップが効かず、あろうことかビタンと前のめりに思い切り転んでしまった。か、カッコ悪い……。
しかし、緊迫する今はそうも言っていられない。その落胆も一瞬で済ませ、目の前で繰り広げられているであろう激戦に備え、すぐさま立ち上がりガシャリと大斧を構える。
……しかし、
「…………え?」
予想していなかった光景が、ボクの目の前に広がっていた。
思いの外狭い、直径およそ3メートル・畳にしておよそ4畳半ほどの、不定形の土に囲まれた小さな地下空間。
その地面に自生している、淡く発光している不思議な植物の影響で仄かに明るい、この空間には……
……なにもなかった。
ボクの目の前には、モンスターの大群も、助けを求めるプレイヤーも、ましてやトレジャーボックスの山すら無かった。あるのは狭い空間と土に岩、淡い光とただの僅かな植物オブジェクト。それだけだ。
……だとすると、一体誰がこのトラップに――
「…………?」
その時だった。
ボクは気づいた。
穴の出口に立つボクの視界の死角。真左の足元一メートル先に、僅かな気配。
――すぐ足元に、なにか、居る。
反射的にその場所に首を捻り、目を動かし……
「―――――」
視界が、純白に染まったかと思った。
そう思えたほどに、白く、穢れない小さな存在が、そこにあった。
その白さを神秘的なものと裏付ける、仄かに青く煌く毛。そこにアクセントのように燦々と灯る紅い目。
そんな姿を有する、一匹の、仔馬。
「キミは――」
――――こうして、ボクは《ミストユニコーン》と出会った。
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