第2部
ダーマ
イグノーの遺志
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「な、なんで姉上のところに……!?」
思わずマーリンも驚いて声を漏らす。なぜなら、イグノーさんの杖が突然光り出したかと思うと、ひとりでにシーラのもとへと向かったからだ。杖は彼女の目の前まで来るとピタリと止まり、さらに強い光を放った。
《自ら強さを願い、知識を求める者よ。これは汝が持つに相応しい。さあ、受け取るがいい》
突然、杖がシーラに語りかけてきた。しかもこの声は、イグノーさんの声だ。杖はシーラに受け取ってもらいたいのか、彼女の目の前で水平のまま停止している。
「あ……あたしが受け取ってもいいの?」
おずおずと、シーラはイグノーさんの杖を掴んだ。その瞬間、杖からこれまでにない光がシーラを包み込んだ。
「シーラ!!」
「あの光……、転職した奴が放っていたのと同じだ」
ナギが茫然としながら呟く。
「ばかな……、あの光は、まさか!!」
何かに気づいたのか、焦ったように大僧正が叫びだす。
やがて、青白い光が収束すると、何事もなかったかのようにシーラが杖を持って立っていた。
「だ……大丈夫? シーラ」
私が尋ねるが、シーラはぼんやりと杖を眺めたまま動かない。すると、彼女に呼び掛けるかのように再び杖に光が灯った。
《我を手にするに相応しい職業へと汝を変えた。だが、我に出来るのはここまでだ。これからは自分の意思で道を選び、知識を得よ。それが賢者としての汝の生き方だ》
そこまで言うと、杖は完全に光を失った。
「賢者……? あたしが……!?」
まるで夢でも見ていたかのように、シーラは杖に向かって呟く。
「ば……、ばかな!! どうして!! なんで姉上が!?」
大僧正だけでなく、今度はマーリンまでもが動揺のあまり声を荒げる。その様子を見て、ユウリとナギは揃って鼻で笑った。
「あんたが尊敬しているお祖父様とやらは、どうやら姉の方を選んだようだな」
「……っ!!」
ユウリの言葉に、悔しそうに唇を噛むマーリン。あれだけシーラを罵倒してたんだ、同情の余地はない。
「なあ、今までさんざんシーラをバカにしてきたんだから、一言くらい謝ったらどうだ?」
ナギも、今までの鬱憤が溜まってたかのように、マーリンに詰め寄った。それはまるで立場が逆転した
「待って、二人とも!」
だが、二人の間に入って止めたのは、シーラだった。
「マーリンは父様の後を継がなきゃならない立場なの。あたしの代わりに色んなしがらみや重圧を背負わされてる。だから……もう何も言わないで」
「シーラ……」
辛い目に遭っていたのはシーラのはずなのに、彼女はマーリンをかばうように訴えている。そんな彼女の様子に、二人はこれ以上マーリンを責めるのをやめた。
「別に、お前が良いならいいんだけどよ……。でも、本当に良いのか?」
ナギの問いに、シーラは小さ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ