第八十三部第二章 撤退の果てにその十三
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「十字軍もムスリムを食っていました」
「そうした蛮行もしていました」
「とかく他の文明圏ではですね」
「見られたりしますが」
それが少ない事例にしてもというのだ。
「それでもですね」
「見られることは事実ですね」
「特に飢饉の時は」
「人は生きる為にあらゆるものを口にしようとする」
これも人間の習性だとだ、アブーは苦い顔で言った。
「黴の付いた麦も土もな」
「土もですか」
「それもですか」
「土粥というものがある」
アブーが先日、戦争前に読んだ書に書かれていたものだ。
「文字通り土を粥にしたものだ」
「そんなものもあるのですか」
「そして飢饉の時食していた」
「そうなのですか」
「イスラムではないがな、とにかく人は時としてだ」
他に食べるものがなければというのだ。
「何でも食べようとするが」
「生きる為に」
「そしてその中で、ですか」
「人肉も食べる」
「そうしますか」
「若しくは狂人だ」
こうした輩がというのだ。
「食うな」
「そうした話もありますね」
「先に挙げられたギリシア神話もそうですが」
「それに加えてですね」
「過去にもですね」
「そうした話がありますね」
「そうだ、だがこれは例外でだ」
あくまでというのだ。
「やはり餓える時がな」
「一番起こりやすいですね」
「人肉食というものは」
「人が生きる為に」
「その為に」
「過去の戦争では起こってきた」
実際にというのだ。
「そうしたこともな、しかしな」
「それでもですね」
「そうしたことはですね」
「起こしてはならないですね」
「そうだ、これは軍だけのことではなくだ」
戦争を行う当事者達だけでなくというのだ。
「国民でもだ」
「同じですね」
「国民が戦争で餓えることもですね」
「あってはならないですね」
「そうだ、このこともよくあったしだ」
戦争が起こりそうしてその中で飢饉が起こることはというのだ。
「サハラの千年の戦乱の中ではな」
「何度か起こっていますね」
「この時代でも」
「左様でしたね」
「そうだった、しかしだ」
それでもと言うのだった。
「それが起こってはな」
「決してですね」
「あってはならないですね」
「国民が餓えることも」
「戦争においては」
「産業やインフラが破壊されるとな」
それによってというのだ。
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