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第六十話 合宿を前にしてその六

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「しないことよ」
「そうなのね」
「ばれるものだしね」
 母はまたこう言った。
「だからよ」
「悪いことはしない」
「もうね」
 浮気だけでなくというのだ。
「最初からしないことよ」
「お金のこともよね」
「ええ、特に犯罪なんかね」
「ばれるわよね」
「よく迷宮入りとか言うけれど」
 こう呼ばれる事件もあるにはある。
「実は真犯人はもう口封じとかでね」
「殺されてるとか」
「あるのよ、事件を隠すにはね」 
 そうしたいならというのだ。
「真犯人にいなくなってもらうことがよ」
「いいのね」
「そう、一番いいのよ」
 こう一華に話した。
「だから推理ものでもよ」
「真犯人殺す展開もあるのね」
「そうよ、実際にそうじゃないかって事件あるのよ」
「そうなのね」
「どうもね」
 埼玉県のある地域で起こった殺人事件が怪しいと言われている、この事件は関係者が次々に怪死しているがそのうちの一人に怪しい人物がいるのだ。
「あるにはよ」
「悪事からは逃れれないってことね」
「そう簡単にはね」
「悪事から逃げるのも大変ね」
「だからね」 
 それでというのだ。
「最初からよ」
「しないことよ」
「そうよ」 
 本当にというのだ。
「いいわね」
「悪事は最初からしない」
「それで隠してね」
「ばれてないと思っていても」
「壁に耳あり障子に目ありで」
「天網恢恢疎にして漏らさずで」
「ばれるものよ」
 娘にまた強い声で話した。
「そのことはわかっておいてね」
「よくね」
「浮気もお金のこともだからね」
「悪いことは何でもなのね」
「そうよ、悪いことをする自分恰好いいとか」 
 母はこんなことも言った。
「誰もしないからって」
「それってイキリとかね」
「馬鹿とか言われるね」
「そうしたことよね」
「あんたはそんな考えないでしょ」
「不良とかヤクザ屋さんとか恰好いいとはあまりね」
 それこそとだ、一華は話した。
「思わないわ、お巡りさんや自衛官の人達の方がね」
「恰好いいでしょ」
「ずっとね」
 まさにというのだ。
「そう思うわ」
「毅然として立派でしょ」
「ああした職業の人達ってね」
「法律や国民を守る人達を恰好いいと思ったら」
 それならというのだ。
「それに越したことはないわ」
「悪事が恰好いいんじゃなくて」
「誰かを守る為に戦う」
「お巡りさんや自衛官の人達ね」
「お母さんもそうした人達こそよ」
 まさにというのだ。
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