第五十九話 夏の盛りでその十四
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「ハヤシライスも」
「そうそう」
かな恵はその通りだと答えた。
「私も作るわよ」
「そうよね」
「幾らとんでもない存在があっても忘れたらいけない」
富美子は考える顔で言った。
「ハヤシライスだってね」
「そうよね」
「それで他のものもよね」
「カレーは確かに凄いけれど」
一華はこうも言った。
「けれどね」
「ハヤシライスも忘れたらいけないわね」
「そう思うわ、まあね」
ここでだ、一華は。
店の壁のお品書きを見回した、そのうえで少し苦笑いになって話した。
「このお店にはないけれどね」
「それは仕方ないわね」
富美子も少し苦笑いで応えた。
「こうしたお店だとね」
「カレーが兎に角人気ね」
「それで出せるお料理も限られてるし」
「カレー以外は焼きそばとかラーメンね」
「それにかき氷だから」
「海の家だからね」
「それは仕方ないわよ」
ハヤシライスを出せないことはというのだ。
「やっぱりね」
「出せるものには限りがあるわね」
「どんなお店でもそうでね」
「それぞれのお店の条件でね」
「このお店では無理よ」
「それは仕方ないわね」
「まあそれはね」
どうしてもというのだ。
「仕方ないわよ」
「そうよね」
「だからここではね」
「カレーを食べることね」
「どっちかっていったら」
カレーかハヤシライスかというと、というのだ。
「それしかないなら」
「それを食べることね」
「ここではカレーね」
「そうよね」
「しかもここのカレー美味しいし」
留奈は確かな声で話した。
「八条ホテルのレシピだしね」
「それで美味しいわよね」
「基本そうでね」
八条ホテルのレシピでというのだ。
「それで夏の海辺に合う様にね」
「アレンジされてるわね」
「日本のね」
「よく考えられてるわね」
「それだけあってね」
「美味しいわね」
「売れる為には」
まさにその為にはというのだ、売れて食べてもらわないと店の商売も出来るものではない。資本主義の摂理である。
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