第八十三話 フランクヴルトにて
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ゲルマニア西部の大都市フランクヴルト。
フランケン大公のお膝元であるこの都市は、トリステインとゲルマニア西部に流れる大河メイン川の支流マイン川の下流に位置することからフランクヴルト・アム・マインとも呼ばれ、西部ゲルマニアにおける金融の中心地でもある。
その金融を取り仕切るのは、フランケン大公の下で財務卿をしているロトシルトで、彼の経営する銀行はフランクヴルトの一等地に存在した。
フランクヴルトの中心にはフランケン大公の大きな城が、都市の支配者であるかのように君臨していたが、一部の聡い市民はフランクヴルトの真の支配者は、大公の財布を支配するロトシルトである事に気付いていた。
トリステインの諜報局長のクーペは、得意の変身を生かしてフランクヴルト各所を諜報しながら回った結果、ロトシルトは自分の屋敷を持たず普段は自分の銀行で寝泊りしている事が分かった。
……ある日のフランケン大公の城の広い城内では、一人のメイドがいそいそと掃除をしていた。
「ちょっとヨゼフィーネさん。次は廊下の掃除をしてちょうだい」
「はぁ〜い」
「いい? しっかりと綺麗に掃除するのよ? 少しでも汚れが残っていたら奥様にどやされるわ」
「分かりました〜」
掃除を命じられた二十代前後の田舎から出て来たばかりの様な女は、ヨゼフィーネといって正体は変身したクーペだ。
クーペは諜報活動の結果。ロトシルトはこの城内に仕事場を設けている事が分かり、その調査のために潜入した。
メイド長の中年女性に、廊下の掃除を任されたクーペはモップとバケツを持って廊下の掃除を始めた。
ハルケギニアには勝手に掃除をしてくれる、『魔法の箒』という便利なマジックアイテムがあるが、高価な為、大公の城ではそんな物は使わない。全て手作業だ。
……クーペは目立たないように、そつなく掃除をしていると、
「まったく! こんな粗相をして、ただで済むと思わない事ね!」
何処からか、女の怒鳴り声が聞こえてきた。
「申し訳ございません、申し訳ございません!」
十代半ばのメイドの少女が、煌びやかな服を着た中年女性にムチで叩かれている。
よく見ると、ムチを振るう中年女性の服に、赤い染みの様な物が出来ていた。
どうやら、メイドの少女が中年女性にワインをこぼしてしまったらしい。
周りに居た家人達は誰も止めようとせず、ただ見守るだけであった。
クーペとしては、下手に目立つ様な真似はせず、その光景を見守り続けた。
「はあ、はあ……これに反省したら、今度はしっかりと仕事をする事ね」
清々したのか中年女性は息が切らして何処かに立ち去った。
中年女性が居なくなった事を確認すると、家人達が一
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