第八十三話 フランクヴルトにて
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なら、そう評するのだろうが……ともかく陛下に指一本触れさせはせん」
ロトシルトの顔をしたクーペは、無表情で書類を漁った結果、近年トリステインで問題になっている成金数人にもロトシルトの手の者が接触している事も掴み取った。
クーペは重要な書類のみ抜き取とると、マクシミリアンから託された『ウォーター・ビット』でコピーした書類を代わりに挟み、侵入の痕跡を一切残さず、音もなく執務室を出た。
……
クーペが部屋を出ると、未だ城内は深夜で魔法のランプの光も少なく、不気味な雰囲気が漂っていた。
(重要な書類は手に入れたし、慎重を期して部屋に戻ろうか)
そう考え、部屋に戻ろうとすると、廊下の先のドアから部屋の明かりが漏れているのを見た。
(おや……?)
クーペが足音と一切の気配を消して、ドアに近づき聞き耳をあてると、フランケン大公夫人のゾフィーが大公ではない別の男となにやら話し込んでいた。
(もしや、大公妃のゾフィーに間男が居たか)
クーペの脳髄は、この状況をいかに利用するか回転し続けた。
10分ほど、ゾフィーと男の様子を窺っていると、男は奇妙な動物の骨を空中にばら撒き、何やらブツブツと喋っている。
(これは、間男ではなく占い師か)
クーペが思ったとおり、男はゾフィーが傾倒している占い師で、ちょうど、信託をが終わり恐縮しながらゾフィーに頭を下げた。
「何か良い結果が出ましたか?」
「はい、ゾフィー様。今年から来年にかけて我が帝国に大いなる幸運が舞い降りると出ました」
「そう、良かったわ」
「それにつきましてゾフィー様。この聖なるウサギの足の護符を持っていれば更に幸運が舞い込みましょう」
「買いましょう。お代はいつもの口座で振り込んでおくわ」
「ありがとうございますゾフィー様。ですが、大公様この事が知られれば、私の命が危のうございます」
「平気よ。あの男は戦場以外じゃ、何も出来ない木偶の棒なのよ。例え知っても私を怖がって何も出来ないわ」
「そうですか、では私の命は……」
「大丈夫よ。決して手は出させないわ」
「……ありがとうございます。ゾフィー様!」
そして明け方、ゾフィーの部屋から占い師の男が、辺りの様子を窺うように出てきた。
早朝独特のひんやりした空気が城内を包み、占い師の男は誰も居ない廊下を急ぐ様に歩いた。
ヨゼフィーネ姿のクーペは、後ろから占い師の男を観察しながら追跡した。
クーペは占い師の男の見た目や立ち振る舞いで平民であると看破した。
そんな胡散臭い占い師が、おいそれと大公夫人のゾフィーに近づけるような身分ではない。
(となると、手引きした者が居る……)
この時クーペ
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