第八十三話 フランクヴルトにて
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会いになられますか?」
「い、いや、止めておこう。それよりも飯を食わせてくれ、腹ペコだ」
「畏まりました」
彼は恐妻家でも知られていた。
戦場では怖いもの知らずの勇者も、戦場以外では、てんでだらしの無い男だった。
「あら、旦那様。せっかく帰っていらしたのに、私には挨拶も無しですか?」
「うう、ゾフィー……」
フランケン大公夫人のゾフィーが現れた。
「ただいまは?」
「た、ただいま」
「よろしい、では食事にしましょう」
「ああ……」
そこには、完全に家庭のイニチアティブを握られた、哀れな男の姿があった。
クーペは使用人たちの列の中でこの光景を見ていた。
クーペの目指す、マクシミリアンの覇道にとって、フランケン大公は無視できない存在だったが、目の前の高慢ちきな女がフランケン大公工作に利用できると感じ内心ほくそ笑んだ。
☆ ☆ ☆
深夜、使用人は一部を除いて寝静まり、城内の殆どの者が活動を休止した頃、クーペは行動を開始した。
クーペの寝泊りする四人部屋は、狭い部屋の中に四人分のベッドが置いてあるだけでの粗末な部屋だった。
変身の応用でヨゼフィーネそっくりの人形を作り出すと、一切の気配を消し去り使用人部屋を出た。
昼間に間にロトシルトの執務室を探し出しておき、闇夜に紛れ執務室を目指した。
クーペが到着すると執務室の入り口には室内には防犯用のガーゴイルが常備されていた。
『……!』
ガーゴイルは執務室に入ってきたクーペに反応した。
だがクーペは得意の変身でロトシルトそっくりに変身し、ガーゴイルの目を欺くと執務室に侵入する事に成功した。
執務室の中は入り口と同じように防犯用のガーゴイルが居たが、ロトシルトそっくりに変身したクーペにはチワワの番犬以下の効果しかなかった。
改めて執務室を見渡すと、これ見よがしに大きな宝箱が机の隣に置いてあった。
罠の可能性がある為、慎重に宝箱を調べると、鍵こそ掛かっていたが罠も何も備え付けてなかった。
(なんという無用心)
しめしめとクーペは右手の人差し指を突き出すと、その指を鍵穴に差し込んだ。
これも変身の応用で、ドロドロに溶けたペースト状のモノで鍵の鋳型を取り、鋳型を使って自分の人差し指を鍵に変化させる秘術だ。
ずぶずぶと人差し指は鍵穴に入って行き、人差し指から溶け出したペースト状のモノはやがて固まり、鍵型ピッタリに変化した。クーペが手首を捻ると宝箱はガチャリと音を立て難なく開いた。
『アン・ロック』を使っても良かったが、アンロック
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