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水の国の王は転生者
第八十三話 フランクヴルトにて
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斉に少女へ駆け寄った。

「大丈夫か?」

「誰か水と布巾を!」

 ヨゼフィーネも駆け寄って少女の状態を診ると、メイド服はビリビリに破け、顔や身体がムチで蚯蚓(みみず)腫れで、とても見れる様な状態ではなかった。

「まずは何処かには運びましょう。男衆は手を貸してちょうだい」

 メイド長が言うと、数人の男達が少女を抱き上げ、使用人が寝泊りする区画へ去っていった。

「あの、メイド長……」

「何かしら?」

 メイド長は少女達の後を追おうとしたが、クーペに声を掛けられた。

「わたしも着いてって良いですか?」

「ここの掃除はどうするのですか?」

「ちゃんと済ませますからお願いします」

 以外と人情派なのか、メイド長はため息をついて、

「……ほんの数分だけですよ。様子を見終わったら、すぐに戻って掃除を済ませなさい」

 と、ほんの数分だけ許可してくれた。

「ありがとうございます!」

 クーペとメイド長は少女が担ぎこまれた使用人の区画へ行くと、とある部屋の前では十人くらいの使用人が、少女の安否を気遣っていた。

「ハンナも可哀想に……」

「ああ、奥様に目を付けられたぞ。どうする? 逃がしてやろうか?」

「下手に逃がしたら。俺達まで被害が及ぶぜ」

「可哀想だが、奥様が飽きるまで耐えて貰わないと……」

 運んできた男達は、寝かせた少女の方を見て何やら話し込んでいた。

「あの、奥様が飽きるまでってどういう事ですか?」

「ん? あんた見ない顔だな、新入りか?」

「そうです。ヨゼフィーネって言います」

「それなら忠告だ。五体満足でこの城から出たかったら、奥様のご不興を買わないようにな」

 使用人の男達は、忠告としてクーペに話した。

「もし買ったらどうなるんですか?」

「散々いびられて、おもちゃにされて死ぬのが関の山だ」

「やっぱり、貴族の方って怖いんですね」

「まあな、昔はあんな人じゃなかったんだがなぁ……」

 使用人の男は、昔を懐かしむように言った。

「昔はどんな方だったんですか?」

「そりゃあ、とても可憐で清楚な方だったんだが、大公様をご結婚した後にな……ほら、この(フランクヴルト)の一等地にある、でっかい銀行のお偉いさん」

 使用人の男が思い出そうとしていると別の男が入ってきた。

「ロトシルト様だよ。フランクヴルトに暮らしているんならそれくらい覚えろよ」

「そうそう、ロトシルト様だ。で、そのロトシルト様が奥様に取り入ってきてな……それ以来、贅沢を覚えて今の様に変わってしまったんだよ」

「お陰で、奥様が散財する度に、ロトシルト様の(ふところ)が肥え太るんだよ」


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