第二部 1978年
影の政府
三界に家無し その1
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じゃ」
「ハイネマン博士は、篁君の件があって、日本行きを渋っていた。
そこで君だ」
右の食指を、マサキの方に向ける。
「君がハイネマン博士と会えば、彼を日本に誘い込むことが出来ると思ってね。
ハイネマン博士も、君が東ドイツで散々に暴れ回った話は知って居よう」
「つまり、俺は出汁に使われたって事かい」
「君の件では、既に官房機密費から50億の金が出ている。
異例の対応で、年俸560万円、家付きで雇っておるのだ。
これくらい好きにしてもらっても文句あるまい。ハハハハハ」
参考までに言えば、1970年は、トヨタ自動車の人気車、カローラが50万円の時代であった。
2022年のカローラの値段は、最低価格が200万円である。
マサキは、現在の貨幣価値で2000万円近い金額の報酬を工作費込みで支払われていたのだ。
もっとも、日々、研究資料を集めていたマサキには有り余るくらいだった。
精々、最新の電子工学資料の他に、複数の外国雑誌や洋書を買い漁って、国際情勢を研究する位。
如何に創意工夫を凝らして、世界征服をするか。と、陰謀をめぐらせていたからである。
それ故に、手を付けず貯めていた400万円ほどを、東ドイツへの工作に使えた。
アイリスディーナの件への謝礼や口止め料として、現金ではなく物品で親族や関係者にばら撒いた。
その影響はすさまじく、シュタージはおろか、警察すらも露骨に近づかなくなった。
給与の他に、支那政府からハイヴ攻略の報酬として埋蔵資源を貰ったが、使い勝手が悪い。
時折現金化しているが、こんな調子で両替し続ければ、安く買い叩かれるだけであろう。
最悪困った時は、海水中に含まれる金を次元連結システムを応用して抽出でもするか……
政界工作でばらまく現金も、数百億単位で必要であろうし……。
そんな事を考えながら、総領事館に帰った。
その日の夕刻。
パークアベニューに聳える日本総領事館の最上階の一室で、御剣と鎧衣が密議を凝らしていた。
話の内容は、マサキの怪しげな動きについてであった。
グレートゼオライマー建造の為、戦術機メーカーと折衝している経緯を御剣に話したのだ。
窓より薄暗くなる街並みを眺めていた御剣は、不敵の笑みを浮かべながら、
「なるほど、木原に気を許すなというのだな」
と、右の方を向いて、直立する鎧衣に顔を向けた。
「はい、自分の見る限り、彼はとんでもないことを企んでいるような……」
「この私が、気が付かぬと思ったのか」
「ハッ」
右掌を上にし、鎧衣の方に差し出して、
「分かって居るからこそ、殿下の計画を話したのだ」と、彼の愁眉を開かせるような事を告げた。
鎧衣は、敬服の意味を込めて、頭を下げる。
「恐れ入りました。しかし、彼は殿下の
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